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2019.11.13 Sustainability Leading Brand Vol.1 〜 ネスレ(Nestlé)とサステナビリティ

■サステナビリティに力を入れることになった経緯

ネスレはスイスに本社を持つ世界最大の食品飲料会社です。19世紀半ば、ヨーロッパでは乳幼児の栄養不足が深刻な社会課題でした。創立者のアンリ・ネスレ氏が安全で栄養価の高い新しい乳幼児用乳製品を開発したことが、ネスレの起源です。
私たちに身近な「ネスカフェ」も、コーヒー価格の大暴落・過剰在庫という課題への対応として開発されたそうです。また、技術支援や資金・物的支援も併せた乳製品工場を設立することで、貧困地域で農家の生活水準や地域経済の成長と良質な原料の安定確保を両立する取り組みも、インドをはじめ10数カ国で取り組まれています。

■サステナビリティと共通価値の創造(CSV)

ネスレの事業活動は、コンプライアンスがベースにあり、その上にサステナビリティ、一番上に共通価値の創造(CSV)という三層構造で考えられています。
CSVとしての注力分野は、栄養、水、農村開発となっており、さらに、2030年に向け、子供たちの健康やコミュニティに暮らす人々の生活向上に対する支援、環境負荷ゼロを目指すための取り組みを進めています。

■グローバルと日本での取り組み

現在は世界190カ国で事業を展開しており、日本でも1913年に支店が開設されています。グローバルでは、サプライチェーン管理や天然資源と水の管理などが重要課題となっています。日本では、高齢者の健康や社員の安全・健康の確保、公正で働きがいのある職場環境の提供といった固有の課題もあり、様々な対応を行なっています。
近年ではプラスチックの削減といった新しい課題もあります。「ネスカフェ」では2008年以来、紙の詰め替え容器への移行および改良に取り組んでおり、今年9月にも「キットカット」の外袋が紙パッケージに変更されました。日本で製造する「キットカット」製品は2022年まで、「ネスカフェ」製品は2023年までに、包装材料の100%をリサイクル可能あるいはリユース可能にするとのことです。

■CSVを進めるためのポイント

ネスレ日本ではCSV推進に当たり、シンプルに「さまざまな顧客の問題を解決する」ことを第一に考えているとのことです。顧客の問題を解決しながら付加価値を創出することこそがマーケティングであるという考え方です。
また、全社員のマーケティングの実践を推進する「イノベーションアワード」を実施しています。単なるアイデアではなくアクションが評価され、その実現のために上司も協力するしくみです。

■トークセッション・質疑応答

ロイドレジスタージャパンの冨田秀実氏の進行により、会場も交え、重要課題の設定方法、イノベーション創出や新製品に対するコストの考え方、グループ内の推進体制など、多岐にわたる質疑・意見交換が行われました。 一番印象に残ったのは、ネスレにはサステナビリティ推進を専門とする部門がないことでした。「顧客」に着目した問題解決というシンプルな動機と、コンプライアンスやサステナビリティを共通の前提とした事業活動により、全部門がサステナビリティかつマーケティング担当として「自分ごと」化されている印象を受けました。
さらに、イノベーションアワードのような全社員参加型の取り組み、グローバルで共通に取り組むルールと各国の現状に合わせた柔軟な開発・コミュニケーションといった全体的な質の担保と個々の自発性を誘導する体制なども、参加した皆さまの参考となったのではないでしょうか。
積極的な会場からの質疑で1時間近いセッションはあっという間に過ぎ、懇親会でも阿部氏への個別質問に長蛇の列ができると共に、参加者同士の会話がはずんでいました。
「Sustainability Leading Brand」は、年明けを目処にVol.2を開催予定です!

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