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2019.12.03 経済成長は心の成長?真鶴町と豊島区から学ぶ、現代らしい自治体の姿とは

目に見える、手に触れられる距離感でSDGsを読み解く

シティラボ東京のトークイベントシリーズ「SDGs日本モデル宣言を読み解く」。第3回は、初回・第2回での議論の内容が自治体の中で実際にどのような経済活動となって現れているのか、2つの自治体からゲストをお招きし、その取り組みを通して覗いてみる場になりました。 シティラボ東京のメンターを務める川廷昌弘さんが場をコーディネートすることで、単なる自治体のまちづくり紹介ではなく、SDGsという観点から取り組みを見つめることが可能に。その結果、他業界の人にもその取り組みについて理解可能になったり、新たな発展可能性を見出すことに繋がったりするのです。 川廷さんは冒頭、国連総会のサイドイベントで打ち出されたピア・ラーニング・メカニズム「City2City Network」や、SDGsサミットでの安倍内閣総理大臣のスピーチの内容を紹介。日本国内の意欲ある自治体や企業が躍進できる可能性を示唆しました。

「美の基準」が支えるまち / 卜部直也さん(真鶴町政策課戦略推進係長)

ゲストスピーカー1人目は、神奈川県真鶴町役場の卜部(うらべ)さんです。学生時代に出会った、「美の基準」という真鶴町の魅力を後世に引き継ぐデザインコードの紹介を通して、そこにある生活風景の美しさやコミュニティの豊かさ、そこから生まれる経済について語りました。真鶴町を愛する人々が、地域の資源を大切に活かしながら、新たな業態で起業したり小商いを営む様子、地元事業者と移住者などが繋がる新しい経済循環の様子を紹介しました。

「消滅可能性都市」から「主役になれるまちへ」 / 安達絵美子さん(豊島区政策経営部「わたしらしく、暮らせるまち。」推進室長)

2人目の安達さんは、豊島区の取り組みについて紹介。住みたい街ランキングの上位にランクインする機会が多くなってきた矢先、まさかの「消滅可能性都市」と名指しされた豊島区。「リノベーションまちづくり」をはじめ、豊島区を立て直すための事業が連続的に立ち上がりました。そのころ「としま会議」への参加をきっかけに区民の主体的な活動も見えるようになり、特に安達さんが携わってきたテクノロジーの力を中心としながらも枠にとらわれず柔軟にまちの課題に向き合い解決策を考える「Code for Toshima」をはじめ、様々な活動と連携・応援するようになったといいます。

1人ひとりの主体性を問いかけたクロストーク

クロストークは、2つの自治体の共通点と相違点の話題が混ざり合うダイナミックな展開になりました。豊島区は都心、真鶴町は地方というように、全く違った地理属性を持った両者。しかし、ともに「消滅可能性都市」と呼ばれながらも、まちへの愛着やプライドを支えに住民1人ひとりが地域を守り育ててきました。たとえば、豊島区池袋のグリーン大通りで行ったような変化を働きかける社会実験、真鶴町で実践している低コストで迅速に想いやアイディアを実装し事業化するリーンスタートアップ、どちらも住民が主体的にまちを動かす仕組みや手法として、地域に根づいた文化を醸成し、さらに経済活動も展開しています。
会場からは「市民が自分ごととしての意識を持つ以前に、自治体職員がそういった意識を持てないでいることが多い」といった問いかけが。これには安達さんも思わず「非常に鋭い質問ですね!」。卜部さんは「実は、スーパー公務員という言葉があまり好きではなくて…」と打ち明けます。“普通”の公務員でできることは多くあり、それを大切にしていきたいし、職場の仲間とも共有していきたいと言います。川廷さんはそんな2人のやり取りを聞きながら、「職員も同じまちに暮らす1人として、特別ではなく”できること”をやっていくことが大事。特別な自治体だけができるのではなく、それぞれがまちでできることを見つけられるはず」と全国の自治体の背中を押しました。

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