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【Event Report】建築家・西田司氏対談 ~ポスト・コロナを探る~第2回 ニューヨークのまちの変化と、広がる市民への救援策

2020年7月7日(火)、シティラボ東京アンバサダーの建築家・西田司氏とシティラボ東京がともに企画した連続対談「~ポスト・コロナを探る~ 目指すべきは“スロー”シティ」の第2回を開催。ゲストは米・ニューヨーク市公園局の都市計画&GISスペシャリスト、島田智里氏です。現在、コロナ禍の影響でニューヨークがどのような変化があったのか、また、すでに行われている対応などについて、都市と公園にスポットを当てて話を伺いました。当イベントには全国から約100名が参加しました。
対談は島田氏が関わるニューヨーク市のまちづくり・公園政策の概要の説明からスタート。ニューヨーク市公園局が管轄するいわゆるオープンスペース・自然緑地は市の陸地部分の約14%に当たります。これに関する政策は、持続可能で自然と共生するまちづくりを目指す、ニューヨーク市の長期環境計画OneNYC に基づいています。
島田氏の主な仕事のひとつが地理空間情報(以下、GIS)による空間分析やその活用。たとえば、GISを活用したニューヨーク市街路樹マップは、市民参加型として仕立てられ、かつ環境利益の可視化と貨幣化を図るなどして環境教育にも貢献する形になっています。
ちなみに、GISは新型コロナに関する状況把握にも活用されているといいます。ニューヨーク市では新型コロナ感染者が最大約21万7000人、死者数約1万5,000人(2020年7月7日時点)。収入・人種が感染率及びコロナによる死亡率との関係性が認められる傾向が見られますが、一例として、そのような傾向やクラスター発生個所などを示す地図などもつくられているとのこと。
続いて西田氏が訊ねたのは、コロナ禍での公共空間の使われ方について。島田氏によれば、一時期セントラルパークには屋外緊急病院が設置され、初期はコロナ感染者以外の患者が対象予定でしたが、次第にコロナ感染者の多くを受け入れる医療施設として活用されました。一方、地元の公園はマスクや物品の配給所になったそうですが、徒歩10分圏の公園の配置が理にかなっていたのがその理由です。公園を自粛中の癒しの場所として訪れる人は少なくありません。多くの公園はパークレンジャーなど公園職員の見回りを強化したうえで開放、パートナー団体が運営する公園ではソーシャルディスタンスの特別な工夫も見られるといいます。
公園局の公式WEBサイトでは独自のparks@homeのページを開設して、公園の現場中継、環境教育、フィットネスなどの情報を随時配信しています。メンタル面の支援としてセルフケアのプログラムなども加えられました。
まち全般を眺めると、へラルドスクエア、タイムズスクエア、ブライアントパークなど観光などで著名な場所にも人はほとんどおらず、また、在宅勤務への切替えによってオフィス街付近の飲食ビジネスなども大打撃を受けているといいます。そのような状況のうえ現在も室内での飲食サービスが禁止されているため、一時的にアウトドアダイニングが許可され、それらの情報はGISを活用したNYC Open Restaurantsとして視覚化、一般公開されています。一方、交通量の減少した道路空間は、BIDなどのローカルパートナー団体、警察などの協力のもと、歩行者や自転車利用に開放されています。
ニューヨーク市でコロナ禍に関わる対応・実行がスピーディなのは、日本と異なり、州・市レベルで施策が行われていることが一因と言えそうです。
最後に島田氏はこのようにコメント。「自分が置かれている立場を中心に判断するのではなく、家族、地域から市などまで広範囲に視野を広げていただきたい。マスメディアのニュースのみに影響を受けると、(各個人においては)困惑やミスジャッジが起こりかねません。自分と異なる立場の方となるべく多く話すとよいのではないでしょうか」
コーディネーターの西田氏は、「タイトルに“スロー”を掲げていますが、コロナ禍での自粛を機に暮らしをスローダウンした結果、身のまわりや暮らしに興味を持つようになった人が増えています。その結果、公園や道路などのパブリックスペースなどでは新たな動きが生まれ、オンラインの活用が活発になるなどの変化も見られますね。今後、コロナ禍が終息したとしても、自分が目の当たりにした光景を忘れることなく、都市や日常について考え続けることが大切ではないでしょうか」と締めくくりました。
【開催概要】
■ゲスト:島田智里(米・ニューヨーク市公園局 都市計画&GISスペシャリスト)
■ナビゲーター:西田司(建築家、東京理科大学准教授)、介川亜紀(シティラボ東京)
**************
■日時:2020年7月7日(火) 20:00〜21:30
■会場:オンライン
■主催:シティラボ東京
[タイムライン]
19:55〜開場
20:00〜開会・イベント趣旨説明、シティラボ東京の紹介
20:10〜対談
21:00〜質疑応答<15分>
21:15〜まとめ
21:30 終了
なお、第3回の対談は7月29日(水)20:00~、 「途上国から世界に通用するブランドをつくる」ため、2006年にバングラディシュでスタートした、株式会社マザーハウス代表取締役副社長の山崎大祐さんをお迎えします。次回もどうぞご期待ください。