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【Event Report】建築家・西田司氏対談 ~ポスト・コロナを探る~第5回 “自立する個”と“自立的な共”がビジネスを、地域を変えていく

2020年10月1日(木)、シティラボ東京アンバサダーの建築家・西田司氏とシティラボ東京がともに企画した連続対談「~ポスト・コロナを探る~ 目指すべきは“スロー”シティ」の第5回を開催。今回はゲストに株式会社ボーダレス・ジャパン代表取締役副社長の鈴木雅剛氏をお招きし、ソーシャルビジネスの浸透に伴う、都市やまちの変容などについて語り合いました。 ボーダレス・ジャパンは社会問題をビジネスで解決する“ソーシャルビジネス”に特化した企業であり、現在世界13カ国で38社が展開しています。また継続的に社会起業家を創出し、ノウハウや資金、人材を提供し共有する相互扶助のエコシステムをつくり出しました。 鈴木氏は、効率化された現在の社会は人と人のつながりが薄れ、自己責任という名のもとに孤立化が進んでいると言います。またビジネスでは効率化が求められた結果、儲けられない人々や状況が置いてきぼりになり、“非効率”的というレッテルを貼られ、それ自体も社会問題となっています。同社は“非効率”も含めて社会を再構築するべく、ソーシャルビジネスのありかたを探り、実践しています。  
新たなソーシャルビジネスを次々に生み出す秘訣は、グループで起業する各社と寄り添う姿勢にあります。同社は選定された事業モデルにまず企業資金を提供し、起業後もバディとして黒字になるまで伴走します。鈴木氏は「要は会社自体が大きなひとつのチームとしてその新たなビジネスを運営するのです。こうした支援体制やフローがあることで、ソーシャルビジネスへ参入する敷居が下がります」と説明します。 新ビジネスの開始には同社に属する事業者全員の承認が必要。その段階を踏むことは、自らが応援したい事業として自分ごとにするという意味があります。生まれた利益は、働く環境と福利厚生の充実、及び他の新たなソーシャルビジネスに再投資することで皆が100%共有する、という考え方です。ある事業が失敗したときに、やり直せる土壌でもあります。「このようなエコシステムを私たちは“恩送り”と呼んでいます」(鈴木氏)。 意外にも同社は立ち上げ当初、不動産仲介業務を主としていたそうです。当時から社会課題に取り組みたいという想いは強く、売り上げの1%を社会課題改善のために寄付していました。しかし、本当に改善されているか直接は見えない、また、普段の事業と直結していないというジレンマが常にあったといいます。そんな中、業務の中で外国人や高齢者の賃貸住宅への入居が困難であるという状況を把握。解決策として外国人と高齢者が共に住むシェアハウスをつくったのを機にソーシャルビジネス専門に転換した、と鈴木氏は話します。 鈴木氏は現在の都市やまちの大きな課題として、冒頭で述べた不登校や独居などの孤立化を挙げ、「日常生活で人と人とが繋がり、困っているときに一声かけ合えるような環境が必要」といいます。同社の事業においても、社会課題の解決のためには“一人ひとりに向き合う”ことが基本的な考え方となっています。 一方、西田氏はこの課題について、効率化の寄り戻しが起きて分断された“個”の統合に向かいつつあると指摘。「都市やまちの建築及び空間は主な機能に特化してつくられてきましたが、昨今よいとされる事例は複合的なものが多い。例えば、図書館は静かに本を読むだけでなく子供の遊び場が併設されていたりと、人と人とが互いの存在を感じられる距離感で、多様な人たちを受け入れる工夫が見られますね」と事例を挙げました。  
そして対談は共通テーマである“スロー”について触れつつ終焉に。
「“スロー”には色々な解釈があります。対比として“お金を効率的に増やす”“業務効率に追われて生きる”ことがあるでしょう。単に仕事をしないのではなく、自己決断のもと、やっていきたいことを仲間とともにあるいは地域・自然の中で進める。そのように“自分”として幸せになることが“スロー”なのではないでしょうか」。(鈴木氏)
「今日お聞きした中で、ソーシャルビジネスに取り組んだ結果、マーケットが大きくなったらすでに自分たちがやることではなくなり、自分たちが必要とされているところに玉を投げるという話が印象的でした。開拓していくスピリッツを感じます。
また、新しいことを始める、差別化を図る、新しい社会をつくるためには、マインドセットのみならず仕組みづくりも重要なのですね。新しいまちづくりや都市でボーダレス・ジャパンのような仕組み(小さな取り組みを幾つも始められる状況)を、まちづくりに携わっている人、都市開発を行っている大企業も含めて進めていけるといいですね」。(西田氏)
自分が望むことに気づき、仲間とともに心地よいコンディションやスピードで取り組んでいくのが“スロー”であり、豊かさである。ボーダレス・ジャパンの“恩送り”には、その一端がすでに見え始めています。また、今後は同社が推進している社会起業家養成のしくみ”ボーダレスアカデミー”を地域に広げていくことも考えているとのことです。“自立する個”と“自立的な共”が都市の生活や公共空間に広がっていく日は遠くないのかもしれません。(取材・文/折田千秋) 【開催概要】
■ゲスト:鈴木雅剛(株式会社ボーダレス・ジャパン代表取締役副社長)
■ナビゲーター:西田司(建築家、株式会社オンデザインパートナーズ代表、東京理科大学准教授)、介川亜紀(シティラボ東京)
**************
■日時:2020年10月1日(木) 20:00〜21:30
■会場:オンライン
■主催:シティラボ東京
[タイムライン]
19:55〜開場
20:00〜開会・イベント趣旨説明、シティラボ東京の紹介
20:10〜対談
21:00〜質疑応答<15分>
21:15〜まとめ
21:30 終了
<関連情報>
ボーダレス・ジャパン
オンデザインパートナーズ