インタビュー
まちづくり×サステナビリティ×α|電動マイクロモビリティで全国の“ラストワンマイル”を補う「Luup」
渋谷の“隙間”に、高密度に配置。周辺の不動産価値向上を目指す
2018年設立のLuupは、電動キックボードをはじめとする電動マイクロモビリティを用いた交通インフラを創出する会社だ。同社が考える電動マイクロモビリティの条件とは、「小型」「一人乗り」「電動」。欧州の主要都市では電動キックボードのシェアサービスが便利な移動手段として浸透し、市場が急拡大している。一方、日本では現行法上、電動キックボードは原付自転車として扱われるため、公道で誰もが気軽に乗ることはできない。同社では、設立当初から独自に電動キックボードを開発しているが、5月25日から開始したサービス「LUUP」では、自社開発の小型電動アシスト自転車を用いている。
LUUPのポートは飲食店や小売店といった店舗やオフィスビル、マンションなどに数多く、自動販売機1台分のスペースがあれば設置可能。地面に駐輪スペースを示すテープを貼り、目印の看板を立てるのみという手軽さだ。自転車の貸し出し、返却は専用アプリを通して管理している。
街中のいたるところにポートがあって、本来であれば5分、10分歩かなくてはいけないところをさっと電動マイクロモビリティで移動できれば便利で負担も減りますよね。さらに、ポートが設置されることによって入居者の利便性が向上すれば、そのマンションやオフィスビルの付加価値も高まるはずです。私たちの事業はまち全体で採算を合わせるような設計になっています」。
「渋谷はよくニュースなどでスクランブル交差点の映像が流れるように、全国的にも印象的な場所だというのが第一の理由です。また、先に説明したようにコンビニに駐車場がないような、超過密エリアで実施することにも意味がありました。土地に余裕のある場所で超高密度に展開したとしても、『土地が余っているからできるのでしょう?』と言われてしまう可能性があったからです。また、渋谷には住民のほかオフィスワーカー、観光客、インバウンドなどさまざまな人たちが集まっているのも特徴の一つです。多様な目的を持った人たちがいて、それぞれが街中をちょっと移動する上でLUUPに利便性を感じてくれている。渋谷を中心としたエリアでのサービス開始後、その価値を実証することができ、他の地域の人たちや関係者の方々へも説明しやすくなってきました」。
「この先、電動モビリティはどんどん進化していきます。現行のものも、『これがキックボードになっていくんだろうな』と連想しやすいデザインを意識しています。近い将来、新しい電動キックボードや他の電動マイクロモビリティが完成し、現行の小型電動アシスト自転車よりも利便性や安全性が高いような結果が出れば、専用アプリでの管理やポートはそのままに、機体だけを差し替えるだけで、最新の短距離移動インフラになるのです」。
「ラストワンマイル」を補う手段として開発
「鉄道網が大きな血管だとすれば、LUUPは駅から先の毛細血管のようなもの。先人たちが電車網を発達させ、インフラを整備した現在の日本だからこそ、『駅からその先』の移動手段、すなわち『ラストワンマイル』の移動をどうするかが今後の日本に必要な課題です。
東京・大丸有エリアで電動キックボードの実証実験開始
「僕らにとっては安全性と利便性の観点から、日本で本当に電動キックボードが必要かどうかを国民の方々に問う場だと思っています。海外ではいきなり電動キックボードを街中に設置することで、圧倒的なスピード感での普及が実現しましたが、日本で同じようにはいきません。LUUPでは、まずは小型電動アシスト自転車のシェアリングの普及を目指し、次は電動キックボードの実証実験と一つずつ慎重に進めています。
たとえ法律的に電動キックボードが利用可能だったとしても、やはり『LUUP』というサービスは小型電動アシスト自転車から始めていたと思います。なぜなら、まちのみなさんが利便性をどれだけ享受できるか、そして、電動キックボードが本当に安全か、という2つの検証課題の議論が混在してしまい、正しく判断できない可能性があるからです。まずは利便性の高さを証明し、どのような機体がふさわしいかは、そのあとでユーザーに尋ねればいいと考えています。大丸有エリアでの実証実験では、キックボードの利便性や使い勝手の良し悪しなど、幅広い感想を聞いてみたいですね」。
「地方では目的地がそこまで多くないため、むしろ地域による自立的な運営を重視しています。機体はITで遠隔管理し、充電などを地元の方々で行えることが重要だと考えています。また、電動マイクロモビリティの場合、その地域の人口、訪問者数などに合わせて臨機応変に対応できることも強みです。例えば『この2週間は祭りがあり、多くの人の利用が見込まれる』ような状況であれば、その期間だけ他の場所から機体を持ってきて台数を増やせばいいですし、反対に、特定地域の人口減などにも柔軟に対応できます」。
「電動も発電するため、電動マイクロモビリティの普及=CO2削減とは必ずしも言い切れませんが、ヨーロッパで電動キックボードの規制緩和が迅速に進んだのは、CO2削減というサステナブルな面があったからだと思います」。
1993年、東京都生まれ。2017年、東京大学農学部を卒業。戦略系コンサルティングファームにて上場企業のPMI、PEファンドのビジネスDDを主に担当。その後、株式会社Luupを創業。代表取締役社長兼CEOを務める。2019年5月には国内の主要電動キックボード事業者を中心に、新たなマイクロモビリティ技術の社会実装促進を目的とする「マイクロモビリティ推進協議会」を設立し、会長に就任。
・Luup
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