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【Event Report】東京のワクワクする未来を考える 饗庭伸×篠原雅武

2020年11月26日(木)、東京都立大学大学院都市政策科学域教授の饗庭伸氏をコーディネーターとして、京都大学大学院総合生存学館(思修館)特定准教授である篠原雅武氏をゲストとしてお迎えし、「東京のワクワクする未来を考える」対談が行われました。当イベントには全国から約45名がオンライン参加しました。 2020年11月26日(木)、東京都立大学大学院都市政策科学域教授の饗庭伸氏をコーディネーターとして、京都大学大学院総合生存学館(思修館)特定准教授である篠原雅武氏をゲストとしてお迎えし、「東京のワクワクする未来を考える」対談が行われました。当イベントには全国から約45名がオンライン参加しました。
左:篠原氏、中央:饗庭氏、右:矢野(シティラボ東京)

■都市に設計される私たち 〜 饗庭氏プレゼンテーション

はじめに、饗庭氏はスカイツリーから東京の都市を俯瞰した写真を挙げ、たくさんの建物や活動が溢れている中で、東京は誰の手にも負えない都市なのではないかと問題視します。
そして、東京には、文化の蓄積など金沢や横浜に並ぶ位置付けとしての「都市としての東京」と国際的な競争に勝つためにインフラなどを整備した「国土インフラとしての東京」があるとした上で、東京の手に負えなさの正体は、後者に原因があるのではないかと言います。
一方で、廃墟として存在していたアパートを地域住民が地域の公園とする例を挙げて、どのように人が介入して「手に負えるもの」として扱うことができるのかと投げかけます。

■都市をモノとして捉える 〜 篠原氏プレゼンテーション

次に篠原氏は都市を「モノ」として捉えることについて話します。饗庭氏の言う「手に負えなさ」とは都市が人間の思考・意識では把握できなくなっていることではないかと言います。この考え方は、人間の感覚では「モノ」を既に知覚できない状態になっているというティモシー・モートンのハイパーオブジェクトに通じるものがあると言います。長い時間の中で考えると、人間がある場所からいなくなった時にはじめて、人がいなくなった都市を「モノ」として認識するのではないかと言います。「廃墟化」など廃棄されるモノとして都市を考えた途端に都市が事物であることに気づくのではないかと篠原氏は言います。「『人間にとって』意味があるものとしてしか物事は見られていないが、その枠が壊れた時のことは考えているのだろうか」と問いかけます。

■「モノ」と「ヒト」の関係 〜 クロストーク/Q&A

次にモノとモノ、モノとヒトとの関係について議論します。都市を「モノ」として抽象的に捉えたときに「モノ」と「ヒト」の関係は新しいものになるのではないかと話します、ニュータウンに住む人を例に、ニュータウンと自分(ヒト)との関係を話すとき、ニュータウンの歴史などを文化論的に語るよりも、そこにある緑についてなど即物的に語る人が多い印象と饗庭氏。「ヒト」が置かれた状況に対して、既にある「モノ」をどのように読み変えていくかが重要だと言います。また、集合住宅の管理組合のような一度作ったものを維持するために強制力が働くことのように、「モノ」と「ヒト」の強い関係を意図的に作っておくのも、都市を「手に負えるもの」として扱うための1つのやり方なのかもしれないと言います。

■都市の何が問題なのか

日本はスクラップ&ビルドの文化があるため、文化的な文脈を重視する欧州よりも都市の物質性を意識してきた可能性があると参加者から質問が飛びます。それに対し、饗庭氏はスクラップ&ビルドはまだ意思が働いている(からまだ良い)が、廃墟化とは意思すらなく、残ってしまうもの。これを問題として考えなければいけないのではないかと言います。所有者不明建物など、国だけでは手に負えなくなっているからこそ、日本にも欧州のスコッター(放置された土地や建物を占拠する行為)のような概念が形を変えて生まれる可能性があるかもしれません。 【開催概要】
■日時:2020年11月26日(木) 20:00〜21:30
■コーディネーター: 饗庭伸(東京都立大学大学院都市政策科学域教授)
■ゲスト: 篠原雅武(京都大学大学院総合生存学館(思修館)特定准教授)
■モデレーター:矢野拓洋(シティラボ東京)
■主催:シティラボ東京(一般社団法人アーバニスト)
[タイムライン]
20:00~20:10 イントロダクション
20:10~21:10 プレゼンテーション/クロストーク
21:10~21:25 Q&A
21:25~21:30 クロージング
21:30~22:00 アフタートーク
第1回レポート 建築家 重松健×ライゾマティクス・アーキテクチャー 齋藤精一
第2回レポート 都市計画家 饗庭伸×建築家 藤村龍至
第3回レポート 建築家 重松健×作家 乙武洋匡