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【Event Report】東京のワクワクする未来を考える 饗庭伸×山崎亮

2020年12月7日(月)、東京都立大学大学院都市政策科学域教授の饗庭伸氏をコーディネーターとして、コミュニティデザイナーである山崎亮氏をゲストとしてお迎えし、「東京のワクワクする未来を考える」対談が行われました。当イベントには全国から約70名がオンライン参加しました。 本イベントは、コロナ禍で世界が同じ問題に直面し、ネガティブになっている今こそ、それをポジティブに変換して「ワクワクする未来」を考えようという連続イベントです。第5回目となる今回は、東京の郊外をテーマとして、饗庭氏より「都市像」、「設計」、「空間」、「歴史と未来」、の4つの論点からそれぞれ問いかけがあり、山崎氏がそれに応える形式で、「昨今の東京の巨大開発と今後」、「『ケアする町』としての東京の可能性」について議論を行いました。(前々回の『饗庭氏×藤村氏』のレポートはこちら、前回の『饗庭氏×篠原氏』のレポートはこちら

■大きくなり続ける東京 / 新型コロナのインパクト 〜 都市像

はじめに、饗庭氏が、2018年から2020年の東京都の人口データをもとに、都心から郊外へ住む場所の変化はまだ起きていない現状を説明しました。しかし、鉄道利用者の数は減り、在宅勤務者の数が増えていることも確かで、人口の重心が日替わりで郊外と都心を行き来している状態にあると饗庭氏。移動していた時間で、家の周りを歩くような機会が増えていくのではないかと言います。
また、災害という視点から東日本大震災と新型コロナによる影響を比較すると、前者は被災者と被災者以外の関係が明確であり、制限時間のある高台移転や区画整理など復興のための手段はエリアベースでしたが、後者は被災者と被災者以外の区別が曖昧で、在宅勤務や公共交通を利用しないなど、復興のための手段が個人ベースのため多様であるそうです。
一方、山崎氏は、現状、移動する機会は減っており、YouTubeのような、非同期型の話したい時に話して聞きたい時に聞くような時間差の状態でもコミュニケーションが成り立っていると見ています。アフターコロナにおいても、人々がコロナ前より行動する未来はあまり見えない、その分、近所に対する興味が向上してきたと言います。

■コミュニティのこれまでとこれから 〜 設計

次に饗庭氏はコミュニティデザインの変遷について話しました。1970~80年代は、エリアにタイルを貼るようにコミュニティデザインをしていた時代で、まちづくり協議会、自治会などに、地域の人に集まってもらい、地区の計画を決めていたと言います。1990~2010年代は、網目の結び目をつくり、それをネットワーク的につなげるようにコミュニティデザインをしていた時代で、地域それぞれの課題に対して解決策を探り、それらがつながることで地域を作っていました。そこから、2020年代からのコミュニティデザインの在り方はどう変わるのだろうかと投げかけました。
山﨑氏は、網目の結び目を作っていたコミュニティが崩れてきたり、結び目とは別のところに、コミュニティができているのではないかと主張します。studio-Lの活動は、網目の穴の空いている部分でコミュニティデザインを行うことで、そこで発生したコミュニティが網目につながるかは分からないが、経験をもとに別のところでコミュニティが発生したりしていると言います。コミュニティの網目を一生懸命作ることではなく、できやすい環境を作ることを実践してきたそうです。

■「ケアするまち」とは 〜 空間

さらに饗庭氏は、東京郊外の人口データをもとに、人口分布で団塊の世代が多いことを挙げ、高齢者の割合が増大していく今後、どれだけ面白い「ケアするまち」ができるのかと質問しました。
山﨑氏は、「介護が必要な人」という括り方ではなく、「好きなことを中心に集まった集団の中で介護が必要な人が出てくる」という考え方が必要なのではないかと回答しました。人によって面白いことを実行していく拠点が街の中にないといけないし、予防介護的な観点から、介護が必要になる前の段階から「ケアをし、ケアをされる関係」を作れる場所が必要だからです。

■地域活動がつながる未来 〜 歴史と未来

最後に饗庭氏は、未来はどうなるのか問題提起しました。1870年の明治維新、1945年の敗戦を挙げ、75年のスパンで大きく日本が変わっているが、2020年のコロナでは大きくは変わらないのではないか、と話します。
山崎氏は、自身のワークショップでは25年スパンで市民参加を捉えることが多いと言い、1945年の選挙(市民参加1.0)、1970年ごろの反対運動(市民参加2.0)、1995年のごろの市民が実際に動き始めるNPO元年(市民参加3.0)、そして2020年の市民参加4.0はシェアリングエコノミーの25年になるのではないかと言います。まちの小さな課題を市民自身で解決し、その活動自体がつながることで、大きな問題も解決していくことがありうるのではないかと考えています。

■既にあるものをいかに編集するのか

最後に参加者からの質問を交えた両者のディスカッションを行いました。近年の時代変化として、既に建物や活動などのハードやソフトについては良いものが出来上がっている状態を作れていること、テクノロジーの発達によるコミュニケーションの方法が多様化したこと、コロナによる移動の制限で家周辺の活動密度が上がったこと、個別的にいろいろなものにアクセスできる環境があること、などが挙げられました。空き家や既にあるコミュニティなど既にあるものをどのように編集していくかについてはよく言われますが、ネットワーク的に地域の課題を解決していくことが鍵になるかもしれません。   【開催概要】
■日時:2020年12月7日(月) 20:00〜21:30
■コーディネーター: 饗庭伸(東京都立大学大学院都市政策科学域教授)
■ゲスト: 山崎亮(studio-L、コミュニティデザイナー、社会福祉士)
■モデレーター:矢野拓洋(シティラボ東京)
■主催:シティラボ東京(一般社団法人アーバニスト)
[タイムライン]
20:00 – 20:10 イントロダクション
20:10 – 21:10 ディスカッション/クロストーク
21:10 – 21:25 Q&A
21:25 – 21:30 クロージング
21:30 – 22:00 アフタートーク
第7回のお申し込み⇒ https://citylabtokyo-wakuwaku7.peatix.com/