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第1回 チキチキ シティ・カスタマイズバトル!? 晶文社特別コラボイベント

2022年6月28日、「第1回 チキチキ シティ・カスタマイズバトル!?」を開催いたしました。5月に晶文社より発行された書籍『シティ・カスタマイズ 自分仕様に「まち」を変えよう』の発行を記念して、著者たちがプレゼンテーションを行い、参加者による投票で勝ち抜いていく「バトル」形式のイベントで、オンライン・オフラインで合計45名が参加しました。

■シティ・カスタマイズとは?

東京都立大学(当時、首都大学東京)では、大学生がキャンパスやまちを面白くするために、実際に都市の空間を変えていく実践を行う実験的な取り組みを行ってきました。本書はその中から選りすぐった事例を紹介するものです。図面や材料リスト、製作方法も載っており、本を手にした人がすぐに作れる情報となっています。

■バトルの形式

今回は、書籍に掲載された事例には限定せず、著者たちによるとっておきのシティ・カスタマイズの事例を各々が挙げて、予選・本選を勝ち抜いていくトーナメント形式で実施しました。また、ゲストにも参加いただき、都市や建築の視点からコメントをいただきながら進めました。

(登壇者)

・饗庭伸[東京都立大学都市環境学部都市政策科学科教授]
・荒木源希[建築家/アラキ+ササキアーキテクツ代表取締役/モクタンカン代表。]
・市川竜吾[建築家/ichikawa ryugo studio 代表取締役]
・小泉瑛一[建築家/about your city代表]
・遠山正一郎[建築家/マチトワ共同代表]
・西 昭太朗[インターフェースデザイナー/マチトワ共同代表]

(ゲスト)

・洪華奈氏[studio-L]
・山田 紗子氏[山田紗子建築設計事務所代表]
(写真:小泉瑛一)

■予選バトル

予選では、登壇者6人が2人ずつ組になり、3回のバトルが行われました。

▼バトル#1 遠山さんvs饗庭さん

遠山さんの「Instagram リール」は、動画を活用し、音の挿入やカットでまちを仮想的に編集する取り組みです。一方、饗庭さんの「まちを好きになってもらうには?」では、まちの物語を中吊り広告形式で商店街のアーケードに並べた事例です。ゲストの山田さんと洪さんからは、二人ともまちを使う人の認識に訴えかけるという共通点を持つ一方、仮想空間とリアル空間のアプローチの違いが興味深いとのコメント。現地・オンライン参加者の投票の結果、饗庭さんが勝者となりました。

▼バトル#2 市川さんvs荒木さん

市川さんの「ありあわせの崇高〜CC鳥居」は、蓄積してきた写真コレクションから、塩ビパイプを赤色に塗ってつくった鳥居の紹介です。誰が、何のために作ったのかわからないところに、逆に崇高さを感じるとのことです。一方、荒木さんの「PUBLIC SOIL CLUB」は、家庭でコンポストを行って三鷹駅前の路上で堆肥を回収する取り組みです。つちづくりから始めるまちづくりとして、家庭での生ごみ回収や周辺農家への堆肥の配布への展開も考えているとのこと。まちなかの違和感を感じさせる事例と、まちのあり方をダイレクトに変えていく取り組みという異種格闘技戦でしたが、荒木さんが勝者となりました。

▼バトル#3 小泉さんvs西さん

小泉さんの「階段広場をカスタマイズする」は、横浜駅西口のちょっとガラの悪いひろばを、コロナ対応の屋外座席「西口イートテラス」として再生する取り組みで、段差をいかしたテーブルをつくりました。家族連れや高校生などの利用が増えたとのこと。一方、西さんは豊田駅前の空き地をまちの余地として捉え、もっと楽しくする試みです。焚き火台とシートを置いただけなのですが、逆に、近所の人が椅子を持ってくる、映画やテントサウナなどの活動に展開するといった介入が得られたとのことです。両者ともまちに対するライトな介入という点では似ていますが、結果は西さんの勝利。小泉さんは本選用にとっておきのネタも用意していたようですが残念(笑)。

■決勝バトル

予選勝者による三つ巴で優勝を争います。登壇者も、2枚目のカードで勝負に出ます。   トップバッターは、饗庭さんの「絶対にデザインしない」。空き家や空地のおそれがある郊外住宅地で実際に「ひろば」をつくってしまった事例です。ひろばをつくる主体はあくまで地域の住民。使われていない建物のオーナーと交渉して建物を撤去してもらうことに始まり、花を植えたり、砂利を敷いたりした結果、数年後には周辺のガレージや空き家などが地域に開かれるという展開につながったとのことです。饗庭さんや学生さんはデザインしたい気持ちをこらえ、地元のアイデアを整理することに徹しました。   2番目は、荒木さんが代表をつとめる「モクタンカン」。地域のイベント「いっぴんいち」で子供がモクタンカンを自由に組み立てる場所をつくってみたら、子供の自由な創造力により、最終的に怪獣のようなオブジェが出来上がったそうです。こういうものがまちにあってもよいのではないか、子供が自由に組み立てられるものがあるまちがあってもよいのではないかという提案でした。   最後は、西さんより「まちの見方を整理する」。予選とは打って変わってメディアの活用です。コロナ禍ということもあり、住まいの周辺を楽しみながら集めた「食」に関する情報をGoogleマップに記録、更に整理してInstagramで投稿することで、新しい人との繋がりやおすすめの情報のフィードバック、他のテーマでまちを見ている人への気付きなどが生まれ、更にまちを楽しみたくなる気持ちになる。あえて1つのテーマに絞ってまちを見ることで新たな気付きと循環が得られたとのことです。   ゲストのお二人からも素敵なコメントをいただきました。
  • 「絶対にデザインしない」:私有地なので自由につくれる面白さがある(洪さん)/デザインしないと言っているが建物を撤去して広場にして、隣の建物のファサードがひろばの壁面として立ち上がってくるという具体的なデザインの側面もある。
  • 「モクタンカン」:実は大人にとっても取扱説明書通りではない楽しみを与えてくれるのではないか(洪さん)/フレキシブルだが強い個性を持つツールがカスタマイズにどう影響するか(山田さん)。
  • 「まちの見方を整理する」:まちを1つのテーマで編集する視点の可能性が新鮮(洪さん)/まちの経験の共有は若者らしいまちへの参加の動機になる(山田さん)…等々。
会場からもコメントを沢山いただきました。例えば、「公園に愛称をつけるのもデザインか?」という質問がありましたが、実は饗庭さんの事例では、取り壊した建物の名前をひろばに残しており、それが建物オーナーにとって重要な意味を持っていたとのことです(コメント一覧はこちら)。   いよいよ決戦!三つ巴に票が入り乱れましたが、最終的に饗庭さんが優勝となりました。

■まとめコメント

最後に、主催者でありながら優勝者にもなってしまった饗庭さんから統括のコメントがありました。初のバトル形式でしたが、登壇者の皆さんにとっても、通常のパネリストとは異なる緊張感があったとのことです。また、遠山さんや西さんのInstagram活用の提案は全く予想外だったとのことですが、シティ・カスタマイズは都市を自分ごとにすること…と考えると、空間そのものを変える以外に、まちに対する意識や人間関係を変える新しいアプローチの可能性を考える場ともなりました。