【Event Report】City Lab Ventures オープンイベント06 〜企業はどう再生エネルギーに関わるか-多様な立ち位置で事業と社会を進めていく-
“City Lab Ventures(以下、CLV)”は、環境問題や社会課題に対してイノベーティブな製品やサービスを提供しながら事業の成長も目指すサステナビリティ特化型ベンチャーコミュニティです。2020年10月8日、再生可能エネルギー(以下、再エネ)をテーマとしたオープンイベントを開催しました。
今回の登壇者は、供給者である自然電力、需要家であるTBM、取次事業者として新たなサービスを開発したボーダレス・ジャパン(ハチドリ電力)です。共通した理念・目標を持ちながら、異なる立場で再エネに関わる3社。ベンチャーならではの思い切った取り組みを紹介しながら、再エネにかける想いやノウハウ、課題を共有しました。オンラインで約35名が参加しました。
■キーノートトーク 〜 再生可能エネルギー最前線
まず、再エネの必要性や世界・日本のトレンドなどについて、自然電力株式会社 エナジーデザイン部マネージャーの青木さんが紹介しました。自然電力では「青い地球を未来につなぐ」をパーパスとして再エネの発電から製品(「自然電力のでんき」)の小売まで一貫して事業として取り組んでいます。また、今回のTBM、ハチドリ電力の事例でも連携しています。
再エネの導入・普及の背景は気候変動であり、地球温暖化ガス(CO2ほか)の削減が必須です。CO2削減に向けた2つのアプローチ「省エネルギー」と「エネルギーの脱炭素化」のうち、再エネは後者に係る取り組みです。2015年のパリ協定を皮切りに、企業活動の再エネ導入や情報開示、それを後押しするESG投資など、パリ協定に整合する取り組みは世界で完全にビジネス化し、加速している状況です。
日本の企業でも脱炭素経営の動きは加速しています。TCFD、SBT、RE100といった国際的イニシアチブの参加企業数はいずれも世界でトップクラス、中小企業版「RE100」といった取り組みも進んでいます。再エネ100%の電力プランも近年急増し、ユーザーの選択肢が広がっています。一方、日本では再エネのシェアは18%に留まり、ニーズの高まりに供給が追いついていかない問題もあり、再エネの拡大につながる「追加性」が求められています。また、制度が複雑でわかりにくいことも課題です。法制度の整備も含め、日本での「加速」はこれから(逆に言えば可能性も大きい)という状況です。RE100といった取り組みも進んでいます。再エネ100%の電力プランも近年急増し、ユーザーの選択肢が広がっています。一方、日本では再エネのシェアは18%に留まり、ニーズの高まりに供給が追いついていかない問題もあり、再エネの拡大につながる「追加性」が求められています。また、制度が複雑でわかりにくいことも課題です。法制度の整備も含め、日本での「加速」はこれから(逆に言えば可能性も大きい)という状況です。
再エネが普及した先の未来はどのような社会になるのでしょうか?一つには、環境省の「脱炭素社会ミライ予想図」で描かれているような自立分散した暮らしが挙げられます。低炭素化が進むだけでなく、コンパクトな生活や災害への強靭さも併せ持つ都市・地域像です。今まで資源・エネルギーを求めて争ってきた人類の歴史まで視野を広げると、それは世界の平和に向けた大きな一歩になるかもしれません。
■トリガートーク 〜 需要家の想いと供給側の思い
続いて、TBM株式会社コーポレート・コミュニケーション本部マネージャーの羽鳥さんが、需要家としての取り組みを紹介しました。TBMは「進めたい未来へ、橋を架けよう」を合言葉に、世界中で地産地消が可能な石灰石を原材料とした新素材LIMEXを軸に、持続可能な消費と生産を目指す新素材ベンチャーです。2020年8月に白石工場で使用する電力を再エネに切り替えました。
切り替えに当たっては、学生インターンの提案が後押ししたことに加え、CO2削減という目的に立ち戻って社内の工程だけでなく上流・下流も含めたインパクトや製品の質への影響なども検討した結果とのことです。企業活動としてエコロジーとエコノミーの両立を図るため、契約電力や使用時間の見直し、見積り金額の交渉、市場連動型の料金体系の導入など様々な工夫を行いました。その結果、取締役会でも「いずれ100%にするのだから」と最初から全量切り替えが実現しました。
この切り替えにより888tのCO2が削減される見込みですが、電力料金は昨年度と同等〜微減となっており、経済的なメリットも得られています。なによりも、ベンチャーによるCO2削減の取り組みが顧客やメディアなどに高い評価をいただいたことが、担当者としての喜びだったとのことです。今後、オフィス電力の再エネ化や電気以外の燃料の再エネ化を進めていくと共に、顧客や生産パートナーにも再エネを広げていきたいと考えています(導入ストーリーの詳細はこちら)。
最後に、株式会社ボーダレス・ジャパン(ハチドリ電力事業統括社会起業家)の小野さんが、地球温暖化に対するアクションを通して持続可能な社会をつくることを目的としたサービス「ハチドリ電力」の取り組みを紹介しました。ボーダレス・ジャパンは「ソーシャルビジネスしかやらない」会社として、多様な社会起業家を輩出する独自の仕組みを持ちます。ハチドリ電力は取次事業者という形態で再エネに関わっています。
取次事業者とは、電力の供給は受けながら需要家(個人、法人)とのフロントとなり、独自の料金プランを設定することができる事業者です。この形態を選んだのは、まったなしの地球温暖化に対して最も早く事業を立ち上げられるからということで、2019年12月の意思決定から9ヶ月後の2020年8月には電力供給を開始というスピードで事業を立ち上げました。
ハチドリ電力のプランの特徴の一つは、料金を一律の会費制とし、かつ、電気料金の1%を自分が応援する社会活動の支援に当てられることです。発想のきっかけは、2016年に電力自由化が行われたが実際に切り替えたのは約2割という実態です。料金が安くなるだけでは人は動かないのかもしれない、だが、何かを達成する手段とすれば残りの8割も動くのではないか。多様な社会活動とのネットワークを持つ同社ならではの発想です。もちろん、それ以外にも自然エネルギー100%プランに絞り込むシンプルさ、電気料金の1%を再エネ発電所に投資する「追加性」への配慮(自然電力も同様の取り組みを実施)も加え、個性的なサービスとなっています。
左上:自然電力 青木さん、右上、TBM 羽鳥さん、 左下:自然電力 出張さん、右下:ボーダレス・ジャパン(ハチドリ電力) 小野さん
■トーク/Q&A
共通する想いと異なる立場からの説明に対し、会場からもたくさんの質問が寄せられました。ここからは、自然電力株式会社 ブランディング&コミュニケーション部の出張さんがファシリテーターとなり、登壇者のトークを回していきました。スキーやサーフィンなどが趣味な出張さん、仕事だけでなくプライベートでも気候変動を実感しているとのことです。
まずは、気候変動の抑制・再エネの普及に向けた企業の役割を再認識することから始めます。供給者側としては、まずは再エネの必要性をしっかり伝えると共に、提供するメニューや料金設定を工夫して普及を図ることが重要ですし、需要家側としては、先導的に導入を行った結果を情報発信していく。その際、CO2削減や社会的な評価はもちろん、コストや投資・採用への影響など今まで企業が使っていたものさしも含めて伝えることが重要になりそうです。
一方、まだ再エネの供給比率が低い日本では、再エネに対する需要が増した時に供給側が追いつかないのではないかなど、会場からも鋭い質問が来ました。現段階での100%の再エネ供給は確かに厳しいですが、まずはマーケットが再エネ志向に変わっていくことで、大手電力会社も含めて行動変容を促していくことが必要でしょう。最終的には、個人や企業のレベルを越え、電気だけでなく熱も含めて地域のエネルギー循環を変えていく、経済成長のあり方自体を見直す、雇用の転換を促す、世界的な再エネのネットワークを構築するなど、広く環境・経済・社会を再構築していくことにもつながりそうです。
■未来によりよい地球環境を残していくために
質問は多岐に渡りましたが、最後に各登壇者の想いを述べて本イベントを締めました。ハチドリ電力の小野さんからは「マイクログリッドを始めとしたエネルギーの目標の先にあるのは地球温暖化の防止、子どもや孫が今と変わらない世界で暮らしていけることが大事」と、大きな目的についての再認識がありました。TBMの羽鳥さんからは「サステナブルな取り組みについて、興味のない所もいつの間にかやっている、興味のある所は一所懸命に仕組みをつくるといった、互いの熱意や得意を補完し合うような社会像」の提案がありました。自然電力の青木さんからは「再エネを使うことは、今までは受け側だった供給者が自ら考え行動すること、再エネが見える化されて気持ちが込められることで「花を贈る」ように電気を届けられる社会」への期待が語られました。
課題はまだたくさんありますが、解決に向けて一歩一歩向かっていくことが重要であること、さらに、それを実際にビジネスとして成立させているベンチャーが存在し、国内外の企業や政策も確実に再エネの導入・普及に向けて動いていること、みなさんも自分のできる「Take Action」を一緒に考えてみませんか。CLVでも次のアクションを引き続き起こしていこうと考えています。