インタビュー
まちづくり×サステナビリティ×α| 電気代の1%をソーシャルビジネス支援に。自然エネルギー普及と地域の社会貢献活動を同時に推進する「ハチドリ電力」
電気を切り替えることで、社会貢献活動を応援できる仕組み
「ボーダレス・ジャパンは“社会課題の解決”を第一の目的に置いている会社ですが、実は、社会貢献活動に取り組む団体は資金繰りで苦労しているところが少なくありません。逆に言えば、お金が回る仕組みさえつくれば、社会課題が解決されるスピードは上がっていくということ。ハチドリ電力を通してそのお手伝いができれば、と考えました。
支援先は、団体の規模にはこだわらず、私たちスタッフが志に共感できるかどうか、支援を本当に必要としているかどうかを基準に選び出したという。2020年12月現在、“国際協力”“子どもの貧困・教育”“災害復興・防災”など10のテーマから55団体が登録され、利用者は契約時に好きな団体を選べるようになっている。一般社団法人えんがおもそのひとつだ。
高齢者が孤立しないまちづくり
「調べると、会話の頻度が週1回以下という高齢者が、栃木県内だけで5000人以上いることがわかりました。人生のゴールに孤立があると思ったら、若い人も一所懸命生きられない。おじいちゃんおばあちゃんが幸せそうに暮らしている社会の方が、みんなが幸せになれるのではないかと考えました。
高齢者施設では、リハビリを終えて自宅に戻ったおじいちゃんが、ひとり暮らしで外出する機会もないので身体が弱ってしまい、また骨折して施設に戻ってきたり、認知症になってしまったり、といったことが珍しくありませんでした。“高齢者がずっとひとりきりで家にいる”という状況を変えなければ、根本的な解決にはならないと思ったんです」(濱野氏)
また、まちなかの空き家を活用して、若者と高齢者が集える地域サロンや週に1回みんなで食事をする地域居酒屋、若者向けのソーシャルシェアハウス、宿泊施設などの運営にも取り組んでいる。目の前のニーズに応えていくうちに自然に活動の幅が広がったものだという。
「毎日やることがなくてテレビを見ていたというおじいちゃんがサロンの常連になって『人生が楽しくなったよ』と言ってくれたり、生活支援で知り合った90歳のおばあちゃんがイベントで新たに人との繋がりをつくって『長生きしてよかった』と笑顔を見せてくれたり。そういう姿を見ると、やっていてよかったと思います」(濱野氏)
「ただ、新型コロナウイルス感染症の流行が始まり、活動をどのように続けていくか悩みました。感染症対策だけを考えるなら、高齢者と若者の接点は減らしたほうがいいに決まっています。でも、おじいちゃんおばあちゃんからは、『毎日誰とも接することなく家にいて、生きる意味なんてあるのか』『来年まで我慢すれば、なんていうけど、私たちには来年があるかわからないんだ』という声も聞きました。
そもそも、コロナが流行る前にも、誰かの風邪がうつりそれがもとで肺炎になる可能性も、サロンに来る途中で転倒してそのまま亡くなってしまう可能性もありました。生きるって、高齢者と接するって本来そういうことです。コロナをきっかけに、そのリスクを背負う覚悟がスタッフに生まれたのは良かったと思います。医師や看護師に相談をして考え得る限りの感染症対策を施しながら活動を続け、利用者ご自身に参加するかしないかを選んでもらうようにしています」(濱野氏)
“高齢者の孤立”という社会問題をより多くの人に知ってもらうために
「ハチドリ電力さんからの資金提供は、持続的な点がとてもありがたいですね。それ以上に大きな価値だと感じているのが、ハチドリ電力さんの事業を通じて、たくさんの人に僕たちの活動を知ってもらえるということ。今までえんがおと関わりのなかった方が、『自分にもひとり暮らしのおばあちゃんがいるから応援しよう』『栃木の活動だから応援しよう』とウェブサイトを覗いてくれるんです。
高齢者の孤立という社会課題を解決する第一歩は、“課題の存在を知ってもらうこと”だと考えています。僕たちは収支や活動のノウハウをすべて公開するので、全国で真似してくれる人が出てくると嬉しいですね」(濱野氏)
世の中の3.5%が参加すれば社会は変わる
「法人との契約の場合、1%のインパクトが大きいので、いまは特に法人営業に力を入れています。自然エネルギーに切り替えることで、電気料金はこれまでと同じか少々安くなる法人が多いですね。ハチドリ電力は地球温暖化防止と社会活動家の応援を第一にしているので、赤字にならない程度まで粗利を削って電気料金を下げています。
でも、契約者数を増やすには、『必ず安くなる』という状況をつくらないといけません。そのために、当社は2021年10月までに電力小売事業者になり、発電所から直接電力を仕入れることでさらにコストを下げる予定です」(小野氏)
ハチドリ電力は積み立てている資金を活用し、将来的には発電事業にも乗り出すという。法人の屋根に無料で太陽光パネルを設置するかわりに、数十年の間は固定価格で買い取ってもらう仕組みを構想している。
「世の中の3.5%が参加すれば活動は成功する、社会が変わると言われています。ファーストゴールは、2030年までに198万世帯、12万8000社と契約すること。実現すれば、CO2を1773万トン削減できる試算です。ハチドリ電力は日本一安い電力会社、日本一誠実な電力会社となって、自然エネルギーを推進していきたいと思います」(小野氏)
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