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【Event Report】建築家・西田司氏対談~ポスト・コロナを探る~第10回  経験則から脱却し、データをもとにしたまちづくりへのシフトを加速

2021年9月27日(月)、シティラボ東京アンバサダーの建築家・西田司氏とシティラボ東京がともに企画した連続対談「~ポスト・コロナを探る~ “スロー”シティにフォーカスせよ!」の第10回を開催しました。ゲストは、都市に関わる多くの分野の方々が注目する、日本全国の3D都市モデルの整備・オープンデータ化プロジェクト「PLATEAU」立ち上げに携わった国土交通省都市局の内山裕弥氏。参加者は都市計画コンサルタントやデベロッパー社員、大学の研究者・学生など多岐に渡りました。人数は約60名。申し込み時にはPLATEAUとはどのようなシステムかあらためて知りたい、利用してどのようなことができるのか知りたいというコメントが多数ありました。 当プロジェクトは2020年度より、「デジタルツインの実現」「Map the new world」をコンセプトに開始。都市の生活の質、活動の利便性をより高めるために、従来のまちづくりのデジタルトランスフォーメーションを目的としています。3D都市モデルの整備やオープンデータ化をすすめ、ユースケースを増やすことで、経験則ではなくデータをもとにしたまちづくりを可能にしていくといいます。全体最適・持続可能なまちづくり、人間中心・市民参加型のまちづくり、機動的・機敏なまちづくりの実現・推進を目指します。
2020年度にはすでに世界最大規模となる全国56都市の3D都市モデル整備と、ユースケース開発が完了しています。ユースケースの例として、太陽光パネルをまち全体で何枚置けるのか、住宅の配置や屋根の傾斜、反射による光害まで加味しながら算出するといった地域でのカーボンニュートラルの検討や、バーチャル都市空間でのまち歩き、災害リスク対策のためのセンサー配置シミュレーションなどが紹介され、発想次第で多様な活用が可能であることが示されました。ユースケースは国の直轄で44案件、オープンデータを使用した民間の動きも活発化しているそうです。 当プロジェクトに対する自治体の感触は千差万別とのことですが、小さな都市でもPLATEAUに興味をもつ、いわばキーマンがいると活用の方向性について話が積極的に進められるとのこと。PLATEAUというプラットフォームに活かす基本データは各自治体が保持していることもあり、自治体の温度感は非常に重要だといいます。 冒頭でも触れましたが、PLATEAUの活用により、まちづくりや都市計画、建築は大きな進化が期待されています。現在、都市計画や建築の設計は、最後はカンや経験則に基づくことが少なくない状態です。PLATEAUのようにスケーラビリティと信頼性を持った都市空間データの活用によって、人間の行動のモデル化も可能になり、都市への投資効果を高めたり、住みやすいまちにつなげたりすることも可能になるのではないか、といいます。これを実現するには、国と民間がタッグを組み、都市開発のブラックボックスを開いたうえで、次世代のまちづくり=サステナブルなまちづくりに住民を含む多くが参加できることが肝要だそうです。 今後、PLATEAUを有効に活用していくには、取り扱う人のデータに関する知識の有無や、それを扱えるエンジニアの育成などが重要だと内山氏は考えています。さらに、PLATEAUを使用しない大人たちも「(世代や分野を超えた)共通言語を大切にする」意識が大切だとも指摘しました。まちづくりでもデジタルが大きな武器になる時代、多くの人々、特に学生を含む若年層に、PLATEAUに積極的にふれてほしいと話します。
最後に、西田氏はこのようにコメントして当イベントを締めくくりました。 「PLATEAUの実用化は、物理的なインフラをつくってきた省庁が、インフラ自体に球を投げた(問題意識を示した)、ということだと思う。従来は長大で固定化されていたインフラがスロー≒持続性だと思われていましたが、実は、データドリブンの考えを取り入れて柔軟に計画プロセスを進めていくことが、人間の愛着や生態系なども含む都市の持続可能性に繋がるのではないでしょうか。PLATEAUという触媒を使いつつ考えていくと、都市やまちはもっと楽しくなるかもしれません」 PLATEAU自体はデータを活用したアジャイルなまちづくりを支援する、いわばラピッドなツールですが、ひとつひとつの小さな課題解決を行い、トライアンドエラーにより得た知見をデータに反映し続けることで、時間軸としては変化に対応しながらスロー≒持続可能性を持つ都市が生まれていく可能性を持つのではないでしょうか。(取材・文/介川 亜紀)   【内山裕弥 プロフィール】
国土交通省都市局 都市政策課 課長補佐。1989年東京都生まれ。東京都立大学、東京大学公共政策大学院で法哲学を学び、2013年に国土交通省へ入省。水管理・国土保全局、航空局、大臣秘書官補等を経て現職。
  <関連情報>
参考:PLATEAU
<過去記事・建築家西田氏対談後半>
・第6回  LUUP 岡井大輝氏
・第7回  建築家 竹内昌義氏
・第8回 SLOW LABEL 金井ケイスケ氏 
・第9回 プランテックス 山田耕資氏