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【Report】「U30」企画「自分でまち暮らしをつくるマイクロデベロップメント」 

U30とは?

我々は、「U30がワクワクするまち暮らし」をテーマに、30歳以下の世代がまちへ関わるための「新しい入口づくり」、「新たな関わり、巻き込み」を考え、実践する団体です(随時メンバー募集中)。活動のひとつとして、対談企画を実施し、それぞれのメンバーがかっこいいと思うゲストをお招きし、異なる分野の視点でまちを楽しく暮らすコツ、まちとの関わり方、都市の楽しみ方を考えています。

日常の暮らしをつくるマイクロデベロッパー

2022年9月26日(月)、第5回の対談企画を西(※1)が担当しました。ゲストは、西の千葉県館山に移住した友人の紹介で出会った漆原さんです。漆原さんは自らをマイクロデベロッパーと名乗り、移住先の館山市でエリア、物件の開発をしながら、暮らしを提供できる賃貸住宅やシェアハウス、宿泊業や飲食店などの新しいビジネスをおこしています。今回のテーマは「マイクロディベロプメント」。商店街や自分の生まれ育った町で会社を起こし、日常の暮らしを豊かにするためにイベント企画など試行錯誤しながら取り組んでいるU30のメンバーと「日常の暮らしを自分の手で豊かにしていくためには」について議論しました。

軸をブラしながら、方向性を定めていくという生き方

漆原さんから、学生時代からこれまでの経歴、その当時どのようなことを考えていたのか、紹介がありました。高校時代から広告業界にぼんやりと憧れていて、学生時代に出会った先輩らと100人規模のサークルを3000個束ねてネットワークする事業を経験しました。そこでは人よりも早く社会の基本スキルを身につけることができました。卒業してから3年経って入社したCG制作会社ではヒト・モノ・カネのマネジメントを経験し、その後、クリエイター養成スクール運営会社では新規開校から事業統括まで業務に一貫して携わりました。 ネット広告を早めに始めることができたことで、ネットバブルの時に独立しました。別荘を持ちたいという気持ちから、海沿いのエリアで物件探しをして南房総の海辺に土地を購入したこともありました(建物を建てることなく売却)。その後、フリーランスを経て大手企業子会社の取締役に就任したのですが、パニック障害になり、再び雇われない生き方を目指して、不動産投資を勉強し、館山にあった元官舎を落札して家族と正式に移住し事業を展開しました。 かつては東京に行けば全てがあると信じていたし、まちづくりをしようといったことも考えていませんでした。ウェブ業界を経験したからこそ。「今やる、すぐやる、全部やる」といった感覚が染み込んでいて、できるならすぐやると行動してきました。20代の頃は好奇心に従って様々なことにブレながらもトライしてきたのですが、30代はだんだんと目指すべき方向性のようなものが見えてきて、その方向を見ながらブレている感覚があります。今振り返ってみるとブレたからこそ中心が段々と見えてきたのかもしれません。その中で、「逆張りで生きよう」と自分にあった生き方のようなものも見えてきました。今ではだんだん考え方も変わってきて、やることややりたいことが増えていく中で、「今しか / 僕しかできないこと」を意識しながら事業承継や新規事業などを検討しています。 現在は、まちづくり的な活動に関わっていますが、経験的にマーケティング、プロモーション、ブランティングというのが強みになっていて、これまでの集大成でまちづくりができています。

【議論】日常の暮らしを自分の手で豊かにしていくためには?

U30のメンバーから、漆原さんの話を踏まえて、U30のまち暮らしについて、これまでの人生を振り返ってみての視点とまちづくりの視点を交差させながら議論を行いました。今回、日常の暮らしを自分の手で豊かにしていくための4つのコツを整理できました。

1)「日常の豊かさ」の登場人物が多い暮らし

メンバーの蔭山から「ITの知見が生かされている部分はあるか」と質問がありました。技術的な知見は古くなっていて難しいが、本質的なところで、「気持ちよくつながっている」というのは、まちづくりにつながっていると話が展開しました。日常の中で登場人物が多い方が、楽しく、心強いし、地域にも愛着が湧く。登場人物が多いだけではなくてお互いが気持ち良くつながっている状態が「日常の豊かさ」につながるのかもしれません。

2)地域の未来をつくるとはチャレンジする人を増やすこと

企画者の西から「さまざまな新しい実践をしていく中で、それまでのものをどのように終わらせるのか」と質問がありました。漆原さんは、前述した「今しか/ 僕しかできないこと」を考えた上で、年齢を重ねる自分とホステルのコンセプトが合わなくなると判断し、事業承継を準備中です。30代になり目指すべきものが段々と見えてきたからこそ、新しい事業に取り組んだり、周りを巻き込みながら新しいチャレンジができる場所をつくっています。

3)チームの輪を広げるために居場所と出番をつくる

メンバーの山本からの質問がきっかけで、ボランタリーな活動と事業の持続可能性について議論しました。漆原さんは、お金については大事にしていて、安易に価格を下げることは価値を下げることにもつながり、自分自身の経済的な基盤を整えた上で、そこで得た利益を他に回すことを意識していると言います。チームの輪を広げるだけではなく、居場所と出番を持続可能なものにしていくためのヒントを得ることができました。

4)チャンスを得るために準備をする

漆原さんより「今後の人生は希望に満ちているのか、不安で仕方ないのか」と問いました。メンバーからはどちらでもないが、希望を見つけている段階といった答えがあがりました。漆原さんは知識がないから恐怖心を感じたりするもので、元々素人だった不動産投資について本を40冊読んだことからチャレンジすることができたということなど、準備の大切さ、それが積み重なることでしかチャンスは手に入れることはできないとメンバーに伝えて会を終えました。 今回の知見を踏まえて、この団体のビジョンである「U30がワクワクするまち暮らし」を実践していく際に、それぞれのメンバーのエリアでの取り組みや、普段の生活における暮らしを豊かにするための実践にも大変貴重な機会とヒントを得ることができました。それぞれのメンバーで持ち帰り、それぞれの取り組みで活かすとともに、団体としても積極的に活かしていきたいと思います。   【ゲストプロフィール】 漆原 秀 うるしばら・しげる
1970年生。明治大学在学中の学生ベンチャー起業、CG制作会社、デジタルハリウッドを経て、ネットバブルに乗じてネットマーケティング会社を創業するもリーマンショックで失脚。2度目のサラリーマン生活中に不動産投資を学ぶ。 2016年に千葉県館山市に家族とともに移住。「マイクロデベロッパー」を名乗り、複数の築古物件をリノベーションの手法により再生し事業運営している。 その活動が市行政の目にとまり、現在は官民連携の「館山リノベーションまちづくり」へと発展している。
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  【企画者プロフィール】
(*1)西 昭太朗
1994年生まれ。熊本県熊本市出身。首都大学東京建築都市コース卒業、同大学院都市政策科学域修了後、合同会社マチトワを共同設立。個人個人が都市に新しい視点を生み出し、育てることで「まち暮らし」が豊かになると考えリサーチ、実践している。シティラボ東京 / Minecraftカップ事務局。
<過去記事>
第1回:「U30」の視点で合意形成を考える
第2回:「U30」の視点で考える「まちとの多様な関わり方」 第3回:U30企画 ある人の危機感や楽しみを知ることから「まち」を考える 第4回:「U30」企画 「地域の人と関係を築き仕事にする」