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【Special Report】廃棄物から考えるシティラボ東京メンバーとの旅(唐津市・大崎町編)

2024年3月25日〜27日、シティラボ東京のメンバーである一般社団法人GBPラボラトリーズ(以下、GBP)と合作株式会社(以下、合作)の合同視察を行ってきました。

GBPは「GREEN BUSINESS PRODUCERS」という人材育成プログラムと自治体や企業との共創を行っており、佐賀県唐津市もそのフィールドの1つです。合作は鹿児島県大崎町で大崎町SDGs推進協議会の事務局を担うと共に、その活動(後述)を他の地域にも横展開すべく取り組んでいます。

実は、この企画が実現したのは、去る2月17日の「サスティナブルシティ・サミット4」で、各メンバーが1つのセッションの実行委員としてコラボしたことがきっかけでした。九州の北と南というフィールド、組織の垣根を越えた新しいネットワークづくりのトライアルです。

▼唐津市〜地域環境共生圏を目指して

唐津市は人口約12万人、佐賀県内では2番目の規模となります。福岡から約1時間半でアクセス可能、医療や福祉などの都市施設も整っており、県内では周辺市町も含めた中核的な役割を担う都市とも言えるでしょう。唐津くんちや唐津焼など文化的な特色、虹の松原といった自然資源も有するまちです。

コンパクトな市街地に資源が集まる唐津の街並み

そんな唐津市では、唐津市版地域循環共生圏をめざした検討が進んでいます。その背景には、風水害による土砂崩れや氾濫など災害への対応、エネルギーコストの外部流出、総合的な環境への配慮などがあります。

幅広く複雑な環境問題において、唐津市の取り組みは各方面で今後の展開が期待されますが、現在でも、再生可能エネルギーの導入などに取り組んでおり、2024年度からはカーボンニュートラル推進係も設置されたほか、環境省の「地域循環共生圏づくり支援体制構築事業」の支援も決定。中間支援を行うGBPと共に地域プラットフォームの構築を進めていくそうです。

各方面で今後の展開が期待されますが、今回は「ゴミの分別」という観点から視察・ディスカッションを行ってきました。というのは、ゴミ分別に関して大崎町は日本の先進地域であり、分別が二酸化炭素排出削減に与える効果も証明されてきたところであり、その知見をふまえながらヒントを探れるのではないかという狙いです。

とはいえ、地域によっても条件は異なるため、大崎町のやり方を唐津市でそのまま取り入れるわけにはいきません。唐津市は平成の大合併で8町村が一緒になってできた都市であり、分別方法も地域によって異なっている状態とのことです。新たなごみ処理施設の計画も進む中、循環共生圏としてどのような姿を描くのか、具体のアクションはこれからですが、ディスカッションの中では、唐津くんちを始めとしたイベントから実証的に分別・リサイクルを進めるといったアイデアも出ました。

ユネスコ無形文化遺産「唐津くんち」の曳山
(参考情報)

「唐津市版脱炭素イノベーションによる地域循環共生圏」の検討

https://www.city.karatsu.lg.jp/shinene/sangyo/sangyo/energy/r2shiseisenryaku4.html

▼大崎町〜リサイクルの町から世界の未来をつくる町へ

大崎町は人口約1.2万人、唐津市の約10分の1の規模ですが、自然環境に恵まれ、パッションフルーツやウナギ、和牛や黒豚、若鶏など多種多様な農業・畜産業・漁業の町です。そして、サステナリティ界ではリサイクル日本一を15回獲得したことでも有名です。

大崎町のゴミ分別はなんと27品目!、この細やかな分別があってこそ再資源化(リサイクル)につながっています。また、近年ではサーキュラーエコノミーの進展により、企業側にもゴミを出さない、分別しやすいプロダクト開発のニーズが高まっており、分別に関する豊富なノウハウを持つ同町では、視察のみながらず協業による製品開発の実証が集まっています。

いわば、町民と行政による地道な「まちづくり」がベースとなりサステナブル「ビジネス」へと展開していると言えます。さらに、同町では地元企業と連携した「大崎町SDGs推進協議会」を発足してサーキュラービレッジ構想を策定・推進、さらに町の持つノウハウを他の地域にも移出するなど、意欲的な展開を行っています。

視察では、分別回収されたゴミを資源として再生するそおリサイクルセンター、生ゴミと剪定枝を絶妙なブレンドで堆肥化して農業に返す有機工場、再資源化や堆肥化によって大幅な延命が図られた埋立処分場などを巡りました。

数年で満杯になるはずだった埋立処分場
徹底的に分別されたごみが資源に生まれ変わるリサイクルセンター

そして、今回の一番の目玉は、この4月に本格オープンを迎える直前の体験型宿泊施設「circular village hostel GURURI」への宿泊です。職員住宅をリノベーションしたGURURIは、アイランドキッチンを囲んで料理だけでなく分別も体験できます(他にも色々と環境配慮の工夫が)。料理と食事を楽しみながらも、その後を見ると、プラスチックトレーや包装紙の多さを実感せざるを得ません。

大崎リサイクルシステムを支える分別の説明
分別の実体験、プラごみは洗って乾燥させます

この分別が日常になるまでのポイントは、自治体と町民のコミュニケーション、分別をマネジメントする自治組織(衛生自治会)の活動。大崎町のゴミ分別の本質は、実はコミュニティ形成にあるようです。人口規模や経緯を無視してすぐに他地域で同じことはできないでしょうが、逆に言えば、特別な装置や資金がなくてもここまでできる、ということでもあります。プラや紙の削減、生ゴミの乾燥や堆肥化などから進めていきたいですね。

(参考情報)

ゴミ分別で8割超をリサイクル 鹿児島県大崎町が目指す循環型社会

https://www.asahi.com/sdgs/article/14365758

体験型宿泊施設「circular village hostel GURURI」

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000032.000085406.html

▼まちづくりとサステナビリティ、その間をつなぐもの

今回は、主に廃棄物に焦点を当て、シティラボ東京と御縁があった2つのまちを巡ってきました。対照的とも言える2つのまちですが、市域・町域としてほぼ平均的な人口規模の自治体であり、他の都市・地域に参考となることも多いように感じます。

唐津市では、周辺市町も含む中心的な都市機能や文化・歴史的な資源があり、業務や観光も含めたポテンシャルを持ちますが、市町村合併による規模の拡大がゴミ分別の障壁となっているなど、サステナビリティを推進する際に規模を拡大してきたことによる課題もあるようです。

大崎町では、小規模自治体ならではの丁寧なコミュニティ形成をベースに分別・リサイクルという行動変容を達成してきました。一方、同町でも全国的な課題でもある人口減少や高齢化が進んでいますが、このような取り組みを地域の維持・発展にどう活かしていけるか、これからの課題となりそうです。

サスティナブルシティを考える時には、人口や経済も含めて「都市の暮らしが豊かで持続可能になること(まちづくり)」また、「都市の活動が地球レベルの持続可能性につながること(サステナビリティ)」という2つの視点があります。

ディスカッションの中で興味深かったことは、唐津市民の心がひとつになる唐津くんちといった文化イベントから分別・リサイクルを進められないかというアイデアです。また、大崎町の町民アンケートでは「面倒くさいこと」と「誇りに思うこと」の上位が両方ともゴミ分別だという自負の意識でした。

全てのまちには独自のシビックプライドがあるはずです。それを掘り起こし、育てていく、つないでいくことが、まちづくりでもサステナビリティも有効なアプローチになるのではないでしょうか。

文:平井一歩