【Special Report】CLTスタッフが行く栃木の旅
2024年7月25日、シティラボ東京(CLT)×宇都宮市で開催された「宇都宮ビジネスツアー」の前日にCLTスタッフ3名で栃木県入りし、栃木市を視察してきました!CLTスタッフ右田が以前お世話になった合同会社Walk Worksの遠藤さんに栃木市の見どころやこれからの展望も含めてたくさんにご案内いただいた内容をご紹介していきます!
▼蔵の街とちぎ
栃木市は、栃木県の南部にある人口約15万人の市。旧日光例幣使道が通る栃木市中心部は、江戸時代末期から昭和時代前期にかけて建造された蔵が多く立ち並ぶことから、「蔵の街とちぎ」と呼ばれています。伝統的建造物群保存地区(伝建地区)の制度を用い、大切な歴史を次世代に継承しながら栃木県南の中都市として発展を続けています。
今回ご案内頂いた中心市街地は、駅から伸びる蔵の街大通り(日光例幣使街道の一部)、蔵の街大通りから一本脇に入った嘉右衛門町通り(日光例幣使街道の一部)、川に沿った巴波川綱手道の3本の軸で構成されており、嘉右衛門町通りに沿って伝建地区が指定されています。日光例幣使街道とは、京都から日光東照宮へ幣帛(幣帛)を奉納(朝廷から神への毎年の捧げ物納めること)する勅使が通った道のことで、この例幣使街道の一部が今の中心市街地をなす大通りや嘉右衛門町通りであり、その両側には黒塗りの重厚な見世蔵や、白壁の土蔵群が残っています。
降り注ぐ太陽を避けて日陰から説明を受けるスタッフ笑
栃木市観光協会ホームページより
▼エリアプラットフォーム「ウズマクリエイティブ」
近年は、国土交通省の官民連携まちなか再生推進事業のもと、まちづくりに関⼼を有する官⺠の関係者が協議・調整を行うエリアプラットフォーム(以下、エリプラ)「ウズマクリエイティブ」が2020年10⽉に設立され、活動しています。栃⽊市中⼼市街地の活⼒や魅⼒にあふれたまちづくりの将来像を⽰す「ウズマクリエイティブ10年構想」を策定し、構想を実現するための体制を構築しました。
遠藤さんは、エリプラを支援する専門人材であると同時に、まちづくりを推進する構成者であるWalk Worksとして参画しています。基本方針には、①集客エリアの形成、②アクセスと周遊性の向上、③歩きたくなる環境づくり、の3点を上げており、空き施設の活用や公共空間活用、モビリティ計画など具体の取組み目標も位置付けられています。
遠藤さん提供資料
▼伝統的建造物群保存地区
まち歩き(と言っても気温が非常に高い日で車移動も交えながら笑)のスタートは伝建地区である嘉右衛門町から。日光例幣使街道を挟んで約9.6haのエリアが伝建地区に指定されています。江戸中期以降に多種多様な職種が集まったこのエリアでは、商家を中心としたたくさんの歴史的な建造物を活用し、老舗やユニークな店舗、ガイダンスセンターなどが軒を連ねています。
ランチを頂いたcafé Bazzarは古い床屋を改装したカフェで、日光例幣使街道と隣の通りまで繋がる長屋が何とも味があります。油伝味噌は油屋→味噌屋→ビール醸造と業種を展開させながら長くこの地で商いを続けている企業(現在も味噌づくりは継続中)で、シティラボ東京でも着目しているキーワード「産業リノベーション」に通じるマインドを感じました。
▼街の伝統を紡ぐガイダンスセンター
伝建地区の中心地には、ヤマサ味噌工場(以前、日本一の生産高を誇っていた)の商品搬出のために使われていたスペースを改修したガイダンスセンターがあります。江戸時代末期に建てられた木造・平屋建ての店舗建築を修理・復元し、地区の紹介や周辺の観光案内をする施設として生まれ変わりました。併設する交流館も含めて、市民の会議/イベントスペースとしても使われているとのこと。
館内にはまちの伝統的な御神輿やお祭りの文献などの展示も常設されており、街の文化/歴史にも触れられる、嘉右衛門町エリアの伝統を紡いでいく場所となっています。
栃木の名前の由来は、10の千木(ちぎ)がついていた神社が栃木の中心にあったことから「と(10)ちぎ(千木)」になったと言われているとのこと。交流館の中には大きな地図があり、昔の栃木市の街の姿が残されています。思川の扇状地にあたるエリアなので、元々は盆地であったことや、大平山にはたくさんの桜の木が描かれていたり、昔の街の様子も地図から読み取ることができます。昔ながらの絵のタッチや、方位磁針とってもかわいいので、地図要チェックです!
▼シェアキッチンCHIDORI
そして遠藤さんが営むCHIDORIは元駄菓子屋さんの建物を改装したシェアキッチンです。ここで少し遠藤さんの紹介をしたいと思います。遠藤さんは都内で都市計画やエリアマネジメントのコンサルタントとして勤務した後、6年前に栃木市にJターン(宇都宮市出身→東京→栃木市)しました。移住後は妻/百合子さんと共に合同会社Walk Worksを設立し、まちづくり⽀援事業やSUPツアー事業などを展開しています。CHIDORIは、エリプラの社会実験としての活用検討期間を経て、現在はシェアキッチンとしてWalk Worksの事業に位置付けられています。活用し始めた頃はかなり老朽化していたそうですが、セルフリノベーションで天井の張り替えから壁の補修やインテリアデザインまで全て手掛けたとのこと。曜日貸しのシェアキッチンは全曜日借り手がついており、シェアキッチンを卒業して新たに伝建地区内で店舗を出店する人も出てきているそうです。
まち全体の動きにも携わりながら、空き家活用を独自の事業として取り組む遠藤さんの活動には、専門家と生活者を併せ持ちながら地域に関わる“アーバニスト”としての心意気を感じました。
▼嘉右衛門町のグルーバーが営むショップ街
ガイダンスセンターの並びには様々なアウトドア用品が並ぶショップがありました。お店の名前は瓦奇岳(かわらけだけ)。国内外からチョイスした登山用品を販売しています。こちらのオーナーである小島さんに、こだわりアイテムのご案内も頂きました。瓦奇岳に並ぶ商品は、作家やデザイナーさん、つくり手のメッセージが丁寧に込められたものばかり。大量生産と大量消費が進む昨今で、手に取るアイテムにきちんとメッセージの込められたものを販売したいという思いから商品を選ばれているのだそうです。
実はオーナーの小島さんも、東京から移住して嘉右衛門町でお店をオープンされた移住者の一人で、この地域に住みながらお店の運営をされているそう。
また日光例弊使街道から少し外れた通りにあるおた福堂というお店のオーナーさんは、元々CHIDORIで間借り店長をされており、自身のお店として独立されて始められたとのこと。手作りのグラノーラや、地元で育てられたお野菜の並ぶ飲食店を経営されていました。
嘉右衛門町には、こうした自身の専門性を活かしてお店を営まれる地域の方や、移住者の方多々いらっしゃるそうです。まちを歩いていると「ここは何のお店だろう?」とつい足を踏み入れたくなるお店がずらりと並んでいます。
既に自身で積極的に活動されるプレーヤーの方々が、新しい参入者が挑戦しやすい土壌づくりをされていることもこのまちの魅力なのかもしれません。
これから益々盛り上がってきそうなエリアです!!
▼これからOPEN予定の栃木市の新たな拠点
遠藤さんは現在、また新たな土地での活動をスタートされようとしています。ご自身のご自宅の近くで古民家を購入し、現在リノベーション中。このスペースをまちの人たちの寄り合いの場となるような、カフェスペースにされるのだそうです。(すぐ隣が川なので、雨の日は水位が上がって川の水が溢れてしまう事もあるので対処法を検討中とのこと!)
CHIDORIをはじめ、遠藤さんが手がける場づくりは可変性に富んでいます。目的を決めすぎず、使う人たちのカラーで柔軟に形を変えていく場所づくりが、まちにとって重要なのかもしれないなと思いました。開店される日が楽しみですね。
▼江戸時代の生活の要であった巴波川綱手道
巴波川綱手道(うずまがわつなてみち)は県内にある古い曳舟道の一つで、江戸時代に栃木市 を中心に整備された巴波川に沿って通っている道路です。かつては栃木市と周辺地域との主要な交通路の一部として水運利用され、地域の物流や人の移動に重要な役割を果たしていました。現在はその歴史的な背景や景観から観光資源として大切にされています。 川沿いには灯籠が並び、栃木市の特徴を表した切り絵と地元企業の名前が映し出され、まちの人たちの川への想いを感じることができました。
▼地元民に愛される大皿料理が美味しい居酒屋
綱手道を歩き、お腹を空かせた我々が辿りついたのは、地元の先輩方が集まる小さな居酒屋 いとはん。 大将がつくり、優しい女将さんがどんどんっと出してくれる大皿に乗った料理の数々(数々というのは我々がたくさん頼んだから)。ぷりぷりの焼き鳥、ひたひたの茄子の煮浸し、甘いだし巻き卵、どれも格別のお味でした。巴波川周辺には新旧さまざまな店舗が点在し、まち歩きをするにはぴったりの場所です。散策中に気になりつつも今回は訪れることが叶わなかったお店にもまた行ってみたいですね。
▼昔ながらの憩いの場にストリート文化が融合
玉の湯は明治 22 年から続く老舗の銭湯です。通称「金魚湯」と呼ばれ、なんと、名前の通 り金魚と一緒に入浴することができます。この銭湯のさらにユニークな点は、2階に屋内スケートパークが設置されていること。現オーナーがスケーターだったことから、仲間づくりを目的にスケートボードを楽しむことができるこの施設が新たに増設されました。今では、多種多様な人々が玉の湯に集まる 一つのきっかけになっています。視察の際、スケートパークが開いている時間に伺うことができなかったのですが、次はぜひともスケートボードを体験し、その汗を湯で流すフルコースを味わいたいです。
▼時代を超えて旅人の疲れを癒す宿
かな半旅館は江戸時代の安永年間から続く老舗の旅館です。日本の伝統的な町家の造りで、 表口と裏口が通路でつながっていて、通路の両側に部屋が配置されています。通路を歩くと、お風呂の入口には石の灯籠が立ち、歴史を偲ばせる蔵の装飾が見えたり、敷地内にそれぞれの時代と静かな気品を感じたりできてとても穏やかな気持ちに。一本の動線で全体が構成されているため、迷うことなく食堂やお風呂に辿り着ける点が、筆者にとっての魅力の一つでした。
▼旅のまとめ
今回の伝建地区を中心とした栃木市ツアーでは、遠藤さんをはじめとする支援者のサポートによって、地域住民がそれぞれの夢や希望と、ま ちの活性化という目的が一致した素敵な取り組みが多く見られ、伝統と革新が融合したま ちの未来を感じることができました。ツアーの中で、推進力を持って活動されている遠藤さんからたくさんのエールをもらいました。我々もがんばるぞ!
遠藤さん、暑い中 1 日ご案内してくださり大変ありがとうございました!
文:右田・山川・今井