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【Special Report】CLTスタッフが行く”水の都”静岡県三島市の旅~企業による地域密着型拠点の運営とまちなか活動の創発~

2024年11月2-3日の2日間で静岡県三島市へ訪れました!! 今回は、ラボスタッフが以前よりお世話になっている加和太建設株式会社(以下、加和太建設)の村上さんと、株式会社アール・アイ・エー(以下、RIA)の辰巳さんに、三島まちなかエリアの取り組みと、まちのホットスポットについてお伺いをしてきました。  

▼水の都 三島

静岡県の東部に位置する三島市は、首都圏から新幹線で1時間という都心からのアクセスも良い、人口約10万人の都市です。
三島の中心市街地には、源兵衛川や桜川などの大きな川が流れ、富士山の伏流水から生まれる湧水スポットも各所にあります。豊かな水資源と水のある景色が特徴的なこのまちは、「水の都」と呼ばれています。
(環境省指定の“名水百選”の基準を満たし、国土交通省選定の”水の郷百選”の中にも選ばれています)
三島の川は透明度が非常に高く、暑い日には子どもたちが川で遊ぶ姿が見られるそうです。また、川底には「ちゃんかけ」(お茶碗の破片)が散見され、今でも日常生活で川の水を利用する文化が根付いていることの証なのだそうです。

三島市商工会議所ホームページより

▼三島のまちなかエリアの仕掛け人

ツアー1日目、まずは加和太建設株式会社のオフィス「CROSS MISHIMA」へお伺いしました。元々レストランがあったテナントを改装していて、大きなキッチンが特徴的なオフィスです。(ランチタイムに時々街の飲食店の方が出向いてお食事の提供をして下さる事もあるそうです)   出迎えてくれたのは、経営推進部の村上さん と、まちづくり事業部の本多さん、お二人から加和太建設の取り組みについて詳しくお話しをお伺いしました。   加和太建設は今年で創業78年目を迎え、元々は兵庫県の災害復興の事業を起点に土木業をスタートされました。その後、三島に拠点を移し2007年から不動産業が始まりました。自社施設の運営をしながら不動産活用を起点としたまちづくりプロジェクトも手掛けられています。 「町の元気が将来的な利益の循環につながっていく」という理念のもとに、不動産事業だけではなく、まちづくり事業への投資にも力をいれているのだそうです。   三島駅の新幹線を降りて南口改札を出ると、旧市街地の街並みが広がりますが、商店街は今も繁華性を維持したまま、あらゆる年齢層の住民で賑わっており、徒歩圏内にさまざまな面白いスポットが集積しています。 2020年加和太建設は、三島駅と三島広小路私鉄駅、三島大社を結ぶ3角形の内側を「まちなかエリア」と名付けました。
自社保有の不動産を拠点に活躍するプレーヤーを増やし、まちなかエリアの更なる活性化を目的としてまちなかチャレンジプログラム「みしますきー」を2023年から始動しています。プロジェクト参加者がプレーヤーとなり、続々と事業を開始する中で、現在ではそうした方々の継続的な支援と新たな人材発見も含め、LtG Startup Studioの開発と運営も行っています。
まちなかエリアの店舗数は現状で約600軒、直近5年間で自家醸造を行うクラフトビール店やコーヒースタンドなどが次々に出店をしています。
まちなかエリア地図:みしますきー特設サイトより

▼まちなかチャレンジプログラム「みしますきー」で生まれた新たな風が吹く拠点

「みしますきー」とは、まちなかエリアにおいての事業創出をサポートする加和太建設の支援プログラムです。 物件探し/事業内容の相談/コミュニティとの接点づくりなど、まちで新たに事業やお店を始めたい人が事業化・出店までを手厚く伴走支援してくれる内容となっています。 みしますきーの参加者は地元出身者の割合が多いそう。 個々人が街に拠点を持ちながら他拠点と繋がっていくケースが多く、まちづくり事業部では点と点をつないでいく為の仕掛けやプログラムを考え、まち全体としての賑わい作りを意識されているそうです。

・LtG Startup Studio

LtGは「Local to Global」をコンセプトにした加和太建設が企画をしているスタートアップ支援施設です。元々は複合商業施設だった建物をリノベーションしており、シェアオフィス機能をもつエリアを初め、6curry&というカレー屋さんや、サウナを併設しています。
三島市を拠点に”起業したい”という方々が集う施設で、事業のジャンルや成長ステージを問わずにコミュニティへ参加できるとのこと。地方と都心そして地方から海外への展開やつながりも意識したハブ的役割も担っています。
併設されている6curry& は完全会員制でサードプレイス的に集まれる機能を持ったカレー屋さんです。会員になっている地域の方々は、この場でじっくり対話を重ねたり、一緒にワークショップでカレーを作ったりすることができます。顔見知りという間柄から少しだけ踏み込んだ関係性に変化が起きるのも、この場所の魅力なのだそうです。

・ginger.Books&Cafe

LtGを後にした我々は「みしますきー」を通じて開業された本屋さんをご紹介いただきました。こちらの店長さんは、ご自身で本屋を営みたいという思いを持っており、物件探しをしていた所にみしますきーの情報を知り、プログラムの参加者として応募を決めたそうです。
プログラムの中で行われる街歩きワークショップの際、現在の物件を見つけ、プログラムの伴走支援を受けてお店をオープンしました。店内にはこだわりの本、静岡在住のクリエイターの方が制作した商品も沢山ありました。ここでしか買えない商品が並ぶ店内は、細部まで探検したくなってしまう魅力溢れるお店でした。
キュートな入り口が目を引きます

・鎌倉古道沿いのコミュニティースペース CoDoUみしま

三島広小路駅から三島大通りを東に向かって歩き、鎌倉古道エリアにある RIAが運営される”CoDoUみしま”へ伺いました。
CoDoUの由来は、前の通りが鎌倉”古道”であったことと、心が揺れ動く”鼓動”から、共に揺れ動いていく場所として考えたそうです。
こちらの拠点は元々居酒屋として使われていた店舗をリノベーションしています。CoDoUの食器や備品は、元々の居酒屋にあったものや地元の人たちからの寄付で構成されており、必要なものを少しずつ揃えていっているのだとか。
現在はイベント利用も受け付けており、交流会や飲み会での利用が多いそう。コミュニティスペースの役割と、機会に応じて空間の顔が変わる変幻自在なレンタルスペースとしての役割を持ち合わせています。
RIAは三島駅前の再開発事業にも携わりながら、まちなかの拠点運営もスタートしました。「まちを面的に捉えながら関係性でつながっていくための実験としてこの場を育てていきたい」と辰巳さん。訪問時にちょうど開催されていた「三島満願芸術祭」の拠点として活用されるなど、まちとの繋がりは芽生え始めているようです。

・まちなかに灯りを灯す「みしま未来研究所」

CoDoUから3分ほど歩き御殿川を越えると、みしま未来研究所が見えてきます。こちらの施設はその名の通り、”みしまの未来を創る人をつくること”を目的につくられた施設です。
運営するのは「NPO法人みしまびと」のみなさん。運営に携わるメンバーを広く募集をしていることも特徴のひとつです。
シェアオフィス、レンタルスペース、カフェ兼バー、広場の4つの機能が複合的に活用できます。
建物は元々公立の幼稚園だった建物をリノベーションしており、屋根下の広々した共用の廊下と、ガラス張りの開放的な教室が特徴的です。
夜のバーは、地域のボランティアで運営を行なっており、”何か挑戦してみたい”という想いをもった方々の挑戦の場を担っていたり、様々な目的で利用することができる場所となっています。
バーには様々なクラフトビールが置いてあり、加和太建設がOEMで製造しているビールも置いてあります!飲み当たりがすごくスッキリしていて、「美味しい水がある地域だからこその軽やかさなのかな?」と、ついつい3本も飲んでしまいました笑 また、こちらの研究所では、みしまでのつながりを促すプロジェクトも考案されています。
例えば、朝散歩プロジェクトでは、毎回テーマに沿った目的地を決め、集まった人たちと散歩をします。プロジェクトを始動してからは、散歩をきっかけに三島の朝のまちを楽しむための様々な催しものが生まれているのだとか。コンパクトな街という特徴がメリットとなった様です。住民にとっての新たな三島文化の出発点としても機能している大切な場所なのですね。

・worker's living三島クロケット

株式会社シタテさんが営むコワーキングスペースの三島クロケットには、「家守(ヤモリ)」と呼ばれるスタッフさんが曜日交代で常勤しています。
元々お洋服屋さんだった店舗をリノベーションしたこちらのスペースはインテリや内装も元々の良さを活かしながら設計されており、昔ながらのレトロな雰囲気を味わいながら過ごすことができるワーキングスペースとなっていました。
地下1階と1階はオンライン会議や談笑、飲食も可能なフリースペース、2階には作業集中スペースと、2階から3階にかけてはシェアハウスも併設している建物なのだとか!!ワーキングスペースとしてはもちろん、三島のさまざまなプレーヤーが交わるプラットフォーム的な役割を担っているそうです。
1階のフリースペースの雰囲気。入り口の照明やアンティークへのこだわりが感じられる

・街と溶け込みつながりを育む宿 giwa

今回のツアーでわたし達が宿泊したのはゲストハウスの「giwa」です。
宿の一階にはなんとお寿司屋さんのカウンターが!…というのも、元々お寿司屋さんであった店舗をゲストハウスとしてリノベーションしているのだそうです。
この宿の特徴は、1階共用スペースで午後9時〜10時の間のみ、バー営業を行なっています。バー営業の時間は、宿泊者以外の地域の方も入店が可能となるため、宿泊客はこの街に住む住民の方々から地域ならではの貴重な情報を入手できたり、地域の人は新たな人との出逢いの玄関口として交流の場として活用することができます!
giwaの近所には三島の野菜を購入できる八百屋さんや豊富な海鮮物を取り扱うお魚屋さん、お惣菜も美味しいお肉屋さんなどがあり、宿の周辺で生活ができる環境が整っています。2階にはワーキングスペースもあるので、長期滞在にも向いていそう!!!
このまちに暮らしている様な気持ちで宿泊体験ができる、まちに溶け込んだ素敵なお宿でした。
今回は参加できなかったのですが、「東海道次五十三次」に描かれた三島の歴史を学ぶ街歩きと、自然を感じるネイチャーゲームを体験する朝ツアーも宿主体で企画されている様です。次回はぜひ参加したい…!
店内にはお寿司屋さんのカウンターが残っている

▼三島満願芸術祭

ツアー2日目は三島で開催された”三島満願芸術祭”を堪能してきました。 この芸術祭は中心市街地の空き店舗や公共空間にアート展示を行い、街歩きを楽しんでもらうという内容で、今年で2年目の開催となります。 三島のトレードマークでもある源兵衛川を楽しむ仕掛けや、昔あの太宰治も通ったことがあるかもしれない…と言われている、古くから営まれていたカフェでの写真展示などがありました。当時の様子を知る住民の方々が、展示の詳しい案内をしながら、各ポイント地点で三島の歴史についてお話しして下さいました。 展示を通しながら三島の町の歴史を知り、また現代の三島の町のあり方も感じることができる、三島の過去と今をいったりきたりする様な貴重な時間を過ごしました。芸術祭を通して、まち全体の輪郭を捉えることができる仕掛けづくりが素晴らしいなと感じました。
楽寿園の中に展示されていた小林 万里子さんの作品
カフェ ラ・ぺーの展示作品

▼旅のまとめ

今回の三島ツアーでは、「拠点を介した街全体の回遊性の向上」と「地域と共存する拠点運営」において学びの多い内容となりました。辰巳さんの言葉をかりると、まさしく”1分都市”。お互いに手を振り合えっているのが見える、この距離がポイントなのだとか。たくさんの芽がこの先さまざまな関係性の中で花開き、更に町の賑わいが生まれそうな予感がしています。 また、空襲の被害を受けていない三島地域では昔ながらの伝統的な建築物が守られていますが、建物をただ残すだけではなく、ハード面とソフト面の両方から現代にフィットする形を捉え直し、設計や拠点の活用方法が施されていることも印象的でした。 今回の視察で出逢った各拠点の方々も声を揃えて「三島はほんとに良いところだよ〜住みやすいよ〜」と話されていました。町の人が済み続けたいと感じていること、町に必要な場所や役割を自ら考え、創り出している住人がいること、その人たちを支えるサポートシステムが充足していることも三島の魅力だなと思いました。 我々も伴走支援のあり方や、拠点〜地域に関係性が染み出していく為の仕掛けづくりについて改めて学ぶことができた大変有意義な時間となりました! 三島は夏になると”しゃぎり”というお囃子で競い合う三島大祭りという独自のお祭りがあるみたいです。次回はラボの会員さんも交えながら夏の三島にも訪れてみるのも楽しそうだなと思います。 村上さん、辰巳さん、2日間大変お世話になりました!   文章、写真:今井 里紗
街歩きの小休憩で立ち寄ったさいとうフルーツの店先にて