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【Event Report】Public Partners Pitch 「“自治体まちづくり”最新の取り組みに迫る!」

2024年11月20日、シティラボ東京のパブリックパートナーにフォーカスした初めての企画となる「Public Partners Pitch  “自治体まちづくり”最新の取り組みに迫る!」を開催しました。真鶴町、堺市、宇都宮市、上川町の4自治体が講演・トークセッションを行い、現地・オンライン合わせて45名が参加しました。

1.パブリックパートナーとは?

パブリックパートナーとは、自治体等のまちづくり主体とのパートナーシップにより、シティラボ東京(以下、CLT)に関わる企業や団体と、地域との協議・実証・実験を推進するものです。CLTでは、「事業創出を通じて持続可能な都市をつくる」ことをビジョンに掲げており、そのためのオープン・イノベーション・プラットフォームをミッションとしています。そのためには、「実証・実装の場」としての地域が非常に重要となります。

CLTにおけるパブリックパートナーは2024年12月時点で14自治体(真鶴町、堺市、宇都宮市、中央区、上川町、相模原市、浜松市、京都市、旭川市、小海町、豊田市、山形市、豊橋市)に増加し、各自治体からはCLTや会員等との連携への期待も大きくなっています。そこで今回のトークセッションでは初期参画の4自治体(真鶴町、堺市、宇都宮市、上川町)をお招きし、まずはどのような自治体がCLTのパートナーとなっているのか、お披露目の機会を設けると共に、CLT会員やその他パブリックパートナーに関心ある皆さまとの今後の展開を探る機会としました。

2.4自治体からのピッチタイム!

今回は、真鶴町より町長室兼政策推進課 広報戦略推進者兼戦略推進係長の中村恵美さん、堺市より東京事務所 所長の羽田貴史さん、宇都宮市より東京オフィス 所長の馬場将広さん、上川町より東京事務所 ゼネラルマネージャーの三谷航平さんに登壇頂き、①自治体の概要、②パブリックパートナーに参加したきっかけ、③自治体によるサステナビリティや・脱炭素等の取り組み、④ビジネスと共創して解決したい社会問題・環境問題・地域課題、⑤これからパブリックパートナー制度でやってみたいこと・期待すること、をお話頂きました。

▼真鶴町(神奈川県足柄下郡)

真鶴町は、2021年にCLT初のパブリックパートナーとなった自治体です。CLTの会員である株式会社Groove designsに、地方創生や地域活性化に関する課題解決の実証・実装のフィールドとして真鶴町を提供し、まちで起きている活動・プロジェクトに参加できるデジタルプラットフォーム「my groove」のサービスを導入した実績があります。
真鶴町では、1993年にまちづくり条例である「美の基準」が制定されました。真鶴で過ごす時間を通して幸せを感じられるまちを目標に、「静かな背戸」「舞い降りる屋根」など、8項目に対して、69のキーワードが定められており、まちづくりを進めています。「美の基準」により守られてきた変わらない風景にある豊かさは、真鶴町のとても大切な資源。   その上で、今後は公共交通・公共施設等の充実を図るコンパクトシティの実現と、空き家や省エネ改修等の課題への取組みの2軸をビジネスと共創して解決したいと考えています。特に空き家については、令和元年の調査で、568件存在することが判明しました。しかし、空き家バンク掲載件数が追いつかず、物件を求める移住希望者のニーズに追いついていない現状があるそうです。   今後は、パブリックパートナー制度も生かし、最先端のスマートタウンの実現を目指す真鶴町。ICT技術の活用や不動産流通の課題を一緒に取り組める企業との連携可能性を探りながら、美しい真鶴町の変わらない風景を残していきたいと考えます。
真鶴町の講演スライドより

▼堺市(大阪府)

大阪府で2番目に大きな自治体であり政令指定都市である堺市は、首都圏でのプロモーション活動を広げ、企業との連携を深めていくため、東京事務所を構えています。2025年には万博の開催を控え、インバウンドも含め多くの来訪があると見込まれており、観光拠点となる地域やコンテンツの魅力発信、プロモーション活動にも注力しています。
堺市は「堺エネルギー地産地消プロジェクト」を国に提案。2022年4月に、大阪府で第一号の「脱炭素先行地域」に選定されました。民間事業者と連携し、地域の活性化や社会課題解につながる実証事業を積極的に実施しており、日々様々なイベントを開催しています。中百舌鳥エリアにイノベーション創出拠点を構えるなど環境の整備も行いながら、企業や大学など、多様なアクターによる共創の促進を行っています。   一方、堺市内の企業だけで共創を進めていくことへの限界も感じており、パブリックパートナーへの参画に繋がったそうです。さかいSDGs推進プラットフォーム会員との協働により生まれた「端材ガチャ」は、地元企業がものづくりをする際に出た端材を活用したグッズをガチャに入れて発信する取り組みで、CLTスタッフがパッケージのデザインを担当。CLTでもガチャの設置を行いました。   都市像として「未来を創るイノベーティブ都市」を掲げている堺市。今後は、パブリックパートナー制度を生かし、地域課題、社会課題解決に共に取り組めるパートナーを見つけ、未来への挑戦につなげたいと考えています。
堺市の講演スライドより

▼宇都宮市(栃木県)

宇都宮市は、2021年に「スーパースマートシティ」を掲げ、2022年には「脱炭素先行地域」に選定されています。人口減少社会における持続可能な街づくり推進のため、2008年に「ネットワーク型コンパクトシティ(NCC)を基本構想に位置付け、2023年8月には次世代型の路面電車(LRT)「ライトライン」を開通させました。日本で初めて、地域内でつくられた再生可能エネルギー100%で運行。利用者も増加傾向にあります。
東京から新幹線で48分と都心から近接であること、製造業、農業などの産業が盛んで、商工のマーケットが一定あり、人口約52万人で実証実験に適した環境であることが、宇都宮市との共創における魅力です。2022年には宇都宮市イノベーションコンソーシアムを設立。行政・企業・大学・銀行のネットワークを構築し、スタートアップの支援体制を整えました。地域課題の解決に向けた社会実証を、財政面、ネットワークなどのリソース面から支援する制度や、シェアオフィスとしての機能を持つインキュベーション施設などを通じ、連携・共創を促進しています。   パブリックパートナーへの参画について、「サステナブル」なまちづくりを目指す理念が一致していることが動機として大きかったそうです。2024年8月には、CLTと宇都宮市との共催で、宇都宮市東京オフィスの皆さまのご案内によるビジネスツアーを実施。会員も巻き込んだ形での視察ツアーの開催としては、CLTとしても初の試みでした。   今後は、CLTを含めた多様なネットワークを生かし、「地域共生社会」「地域経済循環社会」「脱炭素社会」の3つを具体的な構想に掲げ、「人」「デジタル」力を原動力として、スーパースマートシティの実現に向けた共創を進めていきたいと考えています。
宇都宮市の講演スライドより

▼上川町(北海道)

上川町は北海道のほぼ中央に位置し、大雪山国立公園を中心にした森林に囲まれた自然の豊かなまち。森林の面積は、約9割にも及びます。日本一早い紅葉や温泉街も有名で、年間100万人の観光客が訪れます。
上川町は、若者の移住や、町内での新規開業も増加しており、企業からも注目を集める自治体の一つです。官民の垣根を越えた独自のパートナーシップの取り組みを推進しています。観光と暮らしを掛け合わせたまちのコンセプトは「北の山岳リゾート」。豊かな自然資源をいかに生かし、活用し、持続可能な環境をどうつくるか、多くの観光客を受け入れている上川町にとって大きな課題です。   CLTの企画者である東京建物株式会社が同じくYNK(八重洲・日本橋・京橋)エリアで企画する偶発的な出会いを育む場「THE FLYING PENGUINS」を三谷さんが訪れたことをきっかけに、すぐにパブリックパートナーに登録頂きました。このエリアのイノベーティブの高まりを感じますね! 2023年には、生物情報可視化アプリ「BIOME」を活用した登山者参加型のプロジェクト「大雪いきもの図鑑プロジェクト」が行われました。「BIOME」は登山客がデータの収集に関わることで、生物多様性の理解に役立つデータの収集に貢献できる仕組みとなっています。再生型観光のモデルケースとしても注目の取り組みです。   既に多くの企業との連携が生まれている上川町ですが、今後は林業・アップサイクル・教育・エリアリノベーションを中心として事業同士を連動しながら、まちづくりを進めたいとのこと。副業や兼業も積極的に受け入れて、今後も共創、協働を積極的に推進する方針です。
上川町の講演スライドより

3.参加者からの質疑応答

4自治体からのピッチに対して、参加者の皆さまから質疑を受けて回答しました。医療関係の事業に取り組まれる方、林業・木材加工等の事業に取り組まれている方などから質問がありました。   中でも「新たな取り組みへの優先順位をどう決めているか」という質問に対しては、「大きなところから入らず、小さなことからスピード感を持ってできることからやっていくことを大事にしている。(堺市)」「所感部署に新規取り組みにコミットできる熱い人がいるかが重要だと思っている。新規で相談があったときには対象の課に“誰がいるか”を思い浮かべながらお話を受けるようにしている。(宇都宮市)」「行政として事業推進のためにできることは補助金を出すか条例を変えるかなので、最後までやり切れる人がいるかに尽きると思う。担当者の巻き込み力にかかっているところもある。(上川町)」などの回答がありました。

4.パブリックパートナー×シティラボ東京 トークセッション

▼スタートアップ等と地域のマッチング成功事例

司会より「窓口担当者として、これは上手くハマっていったなと思える事業創出事例があれば教えてください」という質問を投げかけました。   「出来上がったものではなくて、一緒にソリューションをつくっていくことが大事。(堺市)」、「補助金ありきの事業ではなく、ゼロからでも予算をつけて事業者と共に創り上げていく方が成功しやすいと思う。(真鶴町)」、「人と人のネットワークが一番。スタートアップ等の熱意がある人と、市職員の熱意がある人をどう繋げられるかが大事。先に見せたのは全部その辺りが上手くまとまった事例だったと思う。(宇都宮市)」、「eスポーツやそれに関連するプログラミングなどまで子供たちに体験させる教育事業をやりたくて地域おこし協力隊として移住してきた人がいた。補助は1年のみだったが、最終的には森永製菓がスポンサーとなり小さい町ながら50~60人が集まる大会となった。(上川町)」との回答がありました。  

地域おこし協力隊は任期後に地域に定着しないという課題を抱えている事例も多々伺うため、上川町ではどのように工夫しているかを伺ったところ、任期を経て上川町で起業することを条件に協力隊を受け入れているため、定住率は7割5分くらいとのこと。昨年はカフェも一気に5店舗くらい増えたのだそうです。「3年間で協力隊の人自身が自分の強みを見つけられることを大事にしており、もちろん本人の関心が低い仕事もしてもらいながら、まちのことを自分事化できるよう行政もバックアップしているため、定住率を高められているように思う。」との回答がありました。

▼マッチングの仲介人である登壇者のバックグラウンド

ここまでの話の中で、「人と人を繋ぐ」というキーワードが明確に浮かび上がってきたところで、その仲介人である登壇者の皆さんのバックグラウンドが気になり伺ってみました。

  • 堺市の羽田さんは、これまでの役所人生のほとんどが福祉分野で、子育て支援の経験が豊富です。ここへ来て初めて共創などの分野を実践されているとのこと、羽田さんの素質が開花していることが伺えます…!
  • 真鶴町の中村さんは、給与担当や秘書などの経験がほとんどで、令和3年度に政策推進課に異動し、イラストレーターなどを活用して広報誌を作る仕事に就かれ、令和4年度より現在の町長室と広報担当を兼任することになったそうです。来庁された事業者の皆さんと真鶴町で何かできないかと日々考えているところとのことでした。
  • 宇都宮市の馬場さんは、経営企画部門を20年以上経験されたことで、役所の中のどこの部署にどういう人がいるかがだいたい分かっていることが強みとのこと。東京オフィスには昨年の4月から就任されたそうですが、公民連携だけではなく民民連携も推進できるようにネットワークを広げている最中とのこと。ご自身のことを「発展途上である」とおっしゃるストイックさが印象的でした。
  • 上川町の三谷さんは、入所2年目から地方創生の部署におり、10年ご一緒している天才的な上司の思想を他の人に伝え、バランスを取ることが得意とのこと。ようやく庁内ネットワークを創り上げたものの、未だに「そんなことをやって意味があるのか」と問われることもあるため、強いメンタルが必要とのことでした。

5.シティラボ東京を介した連携のスタート

冒頭にもお示ししたお通り、CLTのパブリックパートナーは急激に増加していますが、自治体数を増やすことが目的ではなく、いかにサスティナブルシティに向けた事業創出に繋げられるかがポイントです。そのためにCLTでは、現地での交流促進・マッチングはもちろんのこと、今回のようなパブリックパートナーの紹介・マッチングを促すイベントの実施、現地視察の開催などを行いたいと思っています。   会の締めくくりに登壇者の皆さんから一言ずつ頂いた中で、堺市の羽田さんがお話された「地方は地域課題や社会課題の宝庫なので、共に解決・軽減してもらえる企業との協力関係を築いていきたい。」との言葉が印象的でした。自治体と企業の協力関係を築くお手伝いをするためにも、共創プラットフォームであるCLTでは、人の顔が見えるネットワークづくり・場づくりを心掛けたいと改めて実感する機会となりました。
(シティラボ東京 マネージャー右田)