レポート
【Special Report】グリーンビジネス実践2025〜“ウォッシュ”にならない本気の“グリーン”
環境を改善しながら持続的に成長していく「グリーンビジネス」は、サステナブルな社会の実現に必要とされるだけでなく、ビジネスそのものを成長させるためにも必須の考え方です。
1.本年度プログラムの特徴
本プログラムが生まれたそもそものきっかけは、2021年発刊の『GREEN BUSINESS: 環境をよくして稼ぐ。その発想とスキル。』に遡ります。慶應大学や東京大学で実践型の演習授業として10年以上も継続してきた講座の経験の上に取りまとめられたこの書籍、これをベースに社会人が受講することでより効果の高いプログラムが生まれるのではないか…ということで、著者の小林光氏・吉高まり氏と共に立ち上げられました。
プログラムの内容・進行も回を重ねるにつれて改良を重ねてきました。例えば、世界的な環境分野の広がりに応じ、2024年度からはカーボンニュートラル・ネイチャーポジティブ・サーキュラーエコノミーなどの「ネクサス(連鎖)」を視野に入れたテーマ設定としました。今年度は、インプット(講義)の回数を若干増やすと共に、アウトプット(演習)提案をプレ・最終の二段階にして提案の完成度を高めるなど、多忙な社会人でも効果を最大限に高められるように工夫しています。メーカー、品質管理、不動産など多様な分野から14名の受講生に参加をいただきました。
2.現場の第一人者から学ぶインプット
最初の第1回〜第3回は、グリーンビジネスを第一線で推進している先行ビジネスパーソンからの講義や質疑応答を行いながら、「グリーンビジネスとはなにか」を腹落ちさせるプロセスです。
第1回:「食✕グリーンビジネスを生み出す「しくみ」づくり」
講師:味の素株式会社 清水健太郎氏
社会価値と経済価値を両立させる「ASV(Ajinomoto Group Creating Shared Value)」 を核とした経営戦略を掲げています。各事業でコア技術であるアミノ酸発酵やバリューチェーン全体での環境価値創造を推進していることはもとより、社内提案制度「ASVアワード」等を通し、新たなグリーンビジネスを生み出し続けていく成長モデルを推進しています。
第2回:グリーンビジネスのマネタイズポイント
講師:東邦レオ株式会社 小山田 哉氏
土壌材、緑化といった事業の展開をふまえ、第三創業期の現在では「ブランド」としてのグリーンの可能性をビジネス領域として開拓、不動産から地域まで多様なプロジェクトを推進しています。単なる緑化に留まらず、省エネやコミュニティも含む総合的な環境形成、また、企業イメージや顧客・従業員満足度に係る投資要素として「グリーン」を捉え直しています。
第3回:グリーンビジネスの拡大戦略とメソッド
講師:旭化成ホームズ 渡辺 直哉氏
創業当初からロングライフを軸とした高水準な戸建・集合住宅事業を基盤として蓄電地搭載・自家消費型ZEH-M集合住宅まで発展させ、さらに再生可能エネルギーを組み合わせた新しい事業モデルを展開しています。入居者には住宅の快適性やレジリエンスを高めると共に、本質的に薄利な電力事業の経営を安定、卒FIT住宅の余剰電力を買い取ることで自社事業のRE100を達成、サプライチェーンやエリアの再エネ循環の展開も見据えています。
これらのグリーンビジネスに共通するのは、多様なステークホルダーの価値観やビジネスを組み合わせながら社会的な価値を同時に創出する視点です。また、それらを仕組み化することで経済的な価値を安定的に生み出す構造をつくっていることです。各々の事例は食、緑、住宅・再エネなどに関わりますが、どんな事業分野でも共通して求められる視点であり、それを身につけることがインプットの意義です。
3.グリーンビジネスに取り組む実践者によるアウトプット
今までのインプットや途中段階でのミニワークショップをふまえ、各グループで実際にグリーンビジネスのモデルを構築します。今回は3〜4人で構成される4つのグループを設定しました。
第4回はプレアウトプットということで、まずは事業のアイデアやバックデータなどを中心に、ひとまず形にしてみます。異業種からなるチームの検討は、バラエティが出る反面、まとまるまでに少々時間が必要です。コーディネーターからは、「どこかで見たアイデア」、「事業を羅列しているだけ」、「もっと提案の膨らみがほしい」…など、辛口のフィードバックも寄せられます。
第5回は、いよいよ最終アウトプット。前回を受けて改善を行うと共に、アイデアをストーリーや事業性もふまえてブラッシュアップされた提案が発表されます。結果として、各チームとも前回とは段違いに完成度の高い提案となりました。ビジネスモデルのため簡単な概要だけですが、以下に紹介します。
グループA|GREEN CHEER PROJECT
音力や振動による発電に着目。発電量ではなくエンターテイメントも活用して人の環境意識や行動の変容を促すと共に、応援体験や協賛も活用してビジネス化
グループB|太陽光・森林・クレジットで結ぶビジネス
市民出資型太陽光発電と森林整備を組み合わせ、地域で電力と環境価値を同時に創出。自治体や地域企業も巻き込みながら中長期・総合的にビジネス化
グループC|MEGURI MEGURU YOU
温泉地を舞台に、シェアの発想を元に、モビリティ、エネルギー、地域資源を循環。共通経費削減、環境事業への投資、地域間連携を段階的に組み合わせ
グループD|Aiスマートダストボックスによるごみ分別の自動化、及びごみ分別業務の省略・省人化事業
ごみが排出される現地での分別自動化と省人化を同時に実現する資源循環システム。分別が推進されると利用料が低くなるといったインセンティブ設計を工夫
4.2025年度のプログラムを終えて
本プログラムは、「通しで参加」し、実際に「手を動かす」ことで、単なる知識だけではなく「実践者」としての視点や考え方を身につけられることが特徴ですが、それだけではありません。
グリーンビジネスは一つの企業・事業でできるものではなく、サプライチェーンや地域の多様なステークホルダーとの協働が不可欠です。異業種混在の受講生によるグループワークを通して「仲間」ができること、これが、明日の協働の基盤となっていくことでしょう。
5.プログラムデータ
▼実施概要
日時: 2025年10月28日(火) 〜 12月16日(月)
回数: 全5コマ(各回18:00〜20:30)+自主ケーススタディ
場所: シティラボ東京(オンライン/オフラインハイブリッド)
主催: シティラボ東京、一般社団法人バーチュ・デザイン、エコ・スーパービジョン
▼参加企業(五十音順)
株式会社Circloop/株式会社GBPラボラトリーズ/合同会社持続可能/積水化学工業株式会社/東京建物株式会社(2)/東洋製罐株式会社/日清食品ホールディングス株式会社/日本紙パルプ商事株式会社/株式会社バイウィル/パナソニックオペレーショナルエクセレンス株式会社/阪急阪神ホールディングス株式会社/株式会社日立製作所/ヤマハ発動機株式会社
▼参加者アンケート抜粋
①研修の総合的な満足度(1:非常に満足〜5:非常に不満足)
②研修のアウトプット(グリーンビジネスモデルの理解、体得)
社会価値と経済価値を一度切り分け、再統合する考え方を理解できた 社会的理想とマネタイズやリアリティといった現実とのギャップを埋める課題を認識した 制約がある中、チームで提案をまとめ、フィードバックを受けることで学びと自信を得た
③研修のアウトカム(自己の成長、ネットワークの形成、ビジネスへの反映など)
他業界・多職種の検討により、新たな発想や視点に触れ、思考の引き出しが増えた 脱炭素やカーボンクレジットの具体的な想定を通し、実務への理解が深まった マネタイズや実装を見据えた議論により、自身に不足していた思考に気づけた グループワークを通し、分野を越えたネットワークを形成できたことは大きな成果 発表回数を重ねることによるチームの進化が印象的だった