【Event Report】Public Partners Pitch 2 「スタートアップ支援充実型の自治体トーク!」
2025年12月3日、シティラボ東京のパブリックパートナーにフォーカスした企画の第二弾である「Public Partners Pitch2(以下、PPP2)」を開催し、現地・オンライン合わせて31名が参加しました。今回のテーマは、「スタートアップ支援充実型の自治体トーク!」として、宇都宮町、京都市、浜松市の3自治体が講演、後半はシティラボ東京(以下、CLT)の会員でもあるMISO SOUPの北川さんがファシリテーターとして加わりディスカッションを行いました。
1.パブリックパートナーとは?
パブリックパートナー(以下、PP)とは、自治体等のまちづくり主体とのパートナーシップにより、CLTに関わる企業や団体と地域との協議・実証・実験を推進するものです。CLTでは、「事業創出を通じて持続可能な都市をつくる」ことをビジョンに掲げており、オープン・イノベーション・プラットフォームをミッションとしています。そのためには、「実証・実装の場」としての地域が非常に重要となります。
CLTにおけるPPは、1年前にPPPを実施してから今回までの間に10自治体増加し、21自治体になりました。そこで第二弾となるPPP2の企画にあたっては、登録自治体向けに、どのようなテーマのトークセッションに参加したいかをアンケートした上で、テーマと登壇自治体を決定しました。
2.スタートアップ支援が充実する3自治体からのピッチタイム!
今回は、21自治体の中でもスタートアップ支援に力を入れており、登壇意向のあった3自治体(宇都宮市、京都市、浜松市)にフォーカスし、宇都宮市より東京オフィス 所長の砂田篤史さん、京都市より東京事務所次長の長﨑慎司さん、浜松市より産業部スタートアップ推進課はままつ首都圏ビジネス情報センターの松島武蔵さんに登壇頂きました。まずはピッチタイムにて、①自治体の概要、②パブリックパートナーに参加したきっかけ、③スタートアップ支援関連の取組みの3点を中心にお話頂いた内容を振り返っていきます。
▼宇都宮市(栃木県)
宇都宮市の東京オフィスでは、スタートアップとの共創・協業を進めたいというミッションを掲げています。スタートアップ支援は20年以上前から注力しており、支援社数は250社を突破しています。宇都宮市が企業・スタートアップとの共創に強い理由は①新幹線で東京駅・宇都宮駅間48分という良好なアクセス、②農・工・商のバランスが取れた産業や研究・開発人材の集積、③次世代型路面電車(LRT)「ライトライン」を導入した先進的なまちづくりの3つです。
※LRTなどの取組みについてはビジネスツアーの記事もご覧ください。
首都圏における企業・スタートアップとの共創事例としては、上下水道局の作業現場へのスマートグラス導入、下水道環境の点検・調査へのドローン導入、宇宙デブリ対策装置の開発・実証に向けた共創などが上げられ、特に宇宙産業については、企業版ふるさと納税を活用して、資金調達の支援をしているそうです。スタートアップや起業家への支援プログラムとして、アクセラレータープログラムを実施したり、公設民営のインキュベーションオフィスを開設したり、宇都宮にオフィスを構える場合には立地支援補助が出るなど、支援が充実しています。
中でも「ミヤ共創ラボ」は、企業が実証実験などを行う際の財政補助に加えて、市の媒体を活用した広報支援や、フィールド・データ・ネットワーク等の資源提供を行う伴走支援をしてくれる特徴を持つプログラムで、庁内の部課と内容を明確にして現在募集している解決したい課題を明記しているのが大変印象的でした。
宇都宮市 講演スライドより
宇都宮市 講演スライドより
東京オフィスとしてはPRに力を入れており、今回のようなトークイベントに参加した回数は2年半で120件、宇都宮市へのビジネスツアーで案内した参加者数は2年半で270名を超えるとのこと。出会った企業との連携可能性の是非については、「まずは聴く、つぎに動く、そして判断する」のスピード3原則のもと本庁のニーズを把握した上で、20日以内にフィードバックすることを東京オフィスの皆さんは目標にされています。東京オフィスのメンバーは3名。単なる窓口担当者ではなく共に走るパートナーとして本気で向き合ってくださる頼もしいメンバーが揃っています。
宇都宮市 講演スライドより
▼京都市(京都府)
京都市がパブリックパートナーに登録した背景として、「京都議定書発効の地」として環境問題に対して行ってきた取組みをCLTが提供するネットワークに連携させることによる、更なる深化と展開への期待が上げられるとのです。観光名所としてのイメージが強い京都市ですが、市街地は市域の23%しかなく、他は森林や農地が広がっている自然豊かな市です。74品目の伝統産業をベースとして技術革新を進めており、世界にも通じる名だたる企業が生まれてきています。約140万人の人口のうち1/10が学生で、大学や研究機関が多く立地していることも特徴です。
スタートアップ支援の取組みとして、京都府・京都市・商工会議所が連携して「京都スタートアップ推進協議会」を設置し、資金調達支援や、スタートアップ向けのオフィスや交流スペースの提供、販売支援など様々な支援メニューを提供しています。2020年7月には内閣府より「スタートアップ・エコシステム グローバル拠点都市」に「大阪・京都・ひょうご神戸コンソーシアム」として京阪神連携で選定されました。スタートアップ支援関連の予算は昨年度から3倍に増加しており、ディープテック分野の研究開発、インキュベーション施設の運営、京都スタートアップの海外展開支援などに取り組んでいます。
京都市の講演スライドより
現在京都市が一番課題と捉えているのは人口減少です。2023年から人口戦略アクションとして105の対策を具体化しましたが、行政だけではなかなか大きな成果が得られていません。このような課題解決に民間企業と一体となって取り組むため、「KYOTO CITY OPEN LABO」という公民連携プラットフォームを2021年に立上げ、開設から現在までに約340件の提案を受け、110件以上の連携が成立しました。京都市が抱える行政課題を開示し、民間企業は解決策をプラットフォーム上で提案することができるシステムになっており、ここに載っていない課題について、企業側が持つ技術・ノウハウ・アイデアを提案できるコーナーも設けられています。
京都市の講演スライドより
京都市の講演スライドより
▼浜松市(静岡県)
浜松市の総面積は全国の市区町村で2番目に広く、縦長の市域に山・川・湖・海とあらゆる自然があります。新幹線で東京まで90分、名古屋市まで30分とアクセス良好で、寛容な風土・市民性があるのも特徴です。「やらまいか精神(方言でやってみよう、やってやろうじゃないかを意味する)」が息づいており、世界でも活躍する名だたる企業が発祥・現在も工場等の拠点を置いています。特に機械類の部品を製造する企業が多く、ものづくりのまちでもあります。浜松市における大きな課題はやはり人口減少で、その対策として「まち・ひと・しごとの一体的・総合的な創生」を市のミッションとして掲げています。
中でも「しごと」にフォーカスし、市内既存産業とスタートアップの融合により新たなイノベーションを起こすこと、スタートアップ誘致により市内での新たな雇用機会創出といった期待を持って、スタートアップ支援に取り組んでおり、はままつ首都圏ビジネス情報センターは東京事務所とは別で2016年に設置されました。
浜松市の講演スライドより
浜松市では、起業前からレイターに至るまで、あらゆるフェーズでのスタートアップ支援メニューを提供しています。中でも「浜松地域スタートアップ連携促進事業」にて運営しているマッチングプラットフォーム「ハマハブ!」には、地域企業が抱える課題や庁内各部署の課題が掲載されており、課題解決に対応できる企業とのマッチングを促進しています。ハマハブ!には、①スタートアップに知見が深い事務局によるサポート、②円滑なマッチングの実施、③マッチング後の支援、の3つのポイントがあり、マッチング後には補助金の交付や伴走支援も行っています。うなぎのイラストは「うなコーン」という名前で、名産のウナギとユニコーンを掛け合わせた、スタートアップ支援におけるイメージキャラクターです。
浜松市の講演スライドより
浜松市の講演スライドより
3.参加者からの質疑応答
3自治体からのピッチに対して、参加者の皆さまから1点質疑がありました。
Q.補助や伴走支援の対象にしている「スタートアップ」の定義を教えてください。
A.
・宇都宮市:ミヤ共創ラボはスタートアップでも既存の企業でも、制限なく応募できます。
・京都市:KYOTO CITY OPEN LABOの支援は、スタートアップに限らず企業・個人事業主・団体など、どんな主体でも応募可能です。
・浜松市:創業10年以内を基準にしてはいますが、厳密ではありません。
4.PP×MISO SOPUトークセッション
PPPでは、登壇自治体とのトークセッションの中で、その取り組みを更に深掘りする時間を設けています。今回より、CLTメンバーの中でトークテーマに合った取組みをされている方にお声掛けし、ファシリテートをお願いする試みを始めました。冒頭には今回のファシリテーターであるMISO SOUPの北川さんより活動の紹介を頂きました。
▼ファシリテーター:MISO SOUP北川さんの活動紹介
北川さんは、ITベンチャー企業での経験を経て、地域社会課題に取り組む株式会社MISO SOUPを創業しました。これからの時代にビジネスに取り組む上では、再現性を持たせ拡張していく部分と地域と向き合ってオリジナリティを活かす部分とのバランス感覚が大事だと感じた北川さんは、共通概念だけれども地域や家庭ごとのアイデンティティが色濃く出る味噌汁を象徴として、企業名をMISO SOUPと名付けました。MISO SOUPの強みは、①ローカルビジネス事業構築など地域事業者支援、②自治体の中間支援、③地域課題解決事業推進企業の経営参画の3つです。これからの時代のまちづくりは、企業だけが設けるのではなく、地域に経済効果をもたらしエコシステムをつくり、自律分散型に多様なプレイヤーが活躍することで盛り上げていくことが重要だと北川さんは考えています。
さて、ここからは3自治体と北川さんとのディスカッションを対談形式にてお届けします。
(宇都宮市 砂田さん:宇・砂田、京都市 長崎さん:京・長崎、浜松市 松島さん:浜・松島、MISO SOUP 北川さん:M・北川)
▼3自治体の担当者が感じる実際の課題
(M:北川)3自治体とも、知名度も産業もあり、先ほど紹介されたような支援体制も充実し、困っていることはなさそうにも感じますが、実際のところどのような課題がありますか?
(京・長崎)人口減少が一番大きい課題です。土地の高騰などもあり、若い世代が就職や結婚のタイミングで出て行ってしまうのですが、仮に土地が安くても、まちに魅力がないと住み続けてもらえないため、企業と共にあらゆる検討を進めています。
(宇:砂田)20年以上前から地域内での起業を促す取組みに注力しているものの、近年の新しいメニューも認知度が低く応募数が増加しないという課題があります。故にプロモーションに力を入れ、宇都宮や企業支援プログラムについて知ってもらう機会を増やすことが大事だと考えています。
(浜・松島)行政は基本的に分野ごとに部課が分けられていますが、スタートアップ支援に関しては必要な知識が幅広く、先端的な分野も多いため、日々勉強だと感じます。
(M:北川)確かにあらゆる分野に対応する必要があり大変ですね。とはいえ本日登壇の3自治体は、全国の自治体の中でも支援制度が大変整っている方で、基本的にどんな相談でも乗ってもらえるのだろうと感じたので、関心のある皆さんはぜひ相談をしてみてもらえたらと思います。
▼印象深いマッチング・事業創出事例
(M:北川)各自治体の中で、印象深いマッチング・事業創出事例はありますか?
(宇:砂田)宇宙産業スタートアップの事例であるBULLは、宇都宮のアクセラレータープログラムを受けたことをきっかけに、宇都宮のインキュベーション施設に本社を置いて根付いてくれました。宇都宮を拠点とするSUBARUの航空宇宙カンパニー・帝京大学の理工学部と産学官連携で「宇都宮から宇宙へ」をタイトルに取組みを進めている特殊な事例が芽生えています。
(M:北川)宇都宮市に本社を構えるだけの環境が整っていると判断されたのでしょうね。本日のトークセッションのように、宇都宮市発信で自動的に広報支援もしてもらえるわけなので、とてもWin-Winなケースだと感じました。
(京:長崎)本庁側にスタートアップとの連携の考え方が浸透しない課題がある中で、先ほども紹介したOPEN LABOに東京事務所自らが、実験的に課題を上げてマッチングした事例があります。ふるさと納税の返礼品は通常郵送での受取ですが、都内の店舗でQRコードを読み取って納税すると、その場で返礼品を受取ることができるサービスを大阪ガスと連携してスタートしました。京都創業の風呂敷メーカーである宮井株式会社の人形町にある直営店舗「唐草屋」や、京都出身のオーナーが始めた門前仲町にある鉄板居酒屋「天文」などで体験することができます。
(M:北川)大阪の企業と京都市が連携し、東京での動きをつくり、京都市に納税という形で効果をもたらす、面白い事例ですね。
(浜:松島)ハマハブ!を通して、遠州鉄道が運営する遊園地の誘客を目的としたクエスト型のゲームを、スタートアップとマッチングした事例があります。ハマハブ!は行政部署とのマッチングよりも、地域企業とスタートアップのマッチングを目的としてスタートしたので、遠州鉄道のような事例が増えると良いと思います。
(M:北川)民間企業から見ると分かりやすい事例ですね。皆さん色々な事業をされていると思いますが、必要なパートナーとのマッチングに行政が動いてくれるのはとても有難いと感じます。
▼適切な部署と企業を繋げる東京事務所の役割
(M:北川)民間企業からすると、商材ごとに担当部署がある程度定まってしまっていると思いますが、仕様書の枠を超えて行政内の課題にアプローチする可能性についてどのように考えますか?
(宇:砂田)行政からの発注は基本的にプロポーザルを通して行いますが、東京オフィスとしてはそこに横串を指すような動きをしていると思います。事例のない取組・課題解決策を提案してくれる企業と出会えると嬉しいです。
(京:長崎)企業としては、「恐らくここだろう」という部署に商材を持ち込んでも、対象外とか、もう少し詰まってからとか言われたりしてしまうこともあるかと思います。東京事務所に相談をしてくれれば、どこにあたるのが良いか、どのように進めるのが良いかを相談に乗ることはできます。
(M:北川)案件をどの部署で対応するかなどは、自治体ごとにも違いますし、自治体ごとの生態系を理解しないと進まないケースもしばしばです。予算化が年度を越えて後回しにされてしまうケースもあります。東京事務所の皆さんが間に立って調整してくださるのはとても有難いですね。
(浜:松島)自治体の規模感や課題の種類もそれぞれかと思いますが、地域ごとに何が必要か、求められているかを自治体職員が把握することが大事ですね。日々勉強です!
▼スタートアップ・企業との共創・協業における広域連携
(M:北川)人口減少時代においては、移住人口・関係人口の争奪戦のようにも思いますが、本日のように横並びでトークセッションに出られる上でいかがですか?
(宇:砂田)一昔前は企業誘致合戦をしていたかもしれませんが、スタートアップや企業の新規事業との共創・協業にあたっては、横展開が可能だと思っています。浜松市で成功した事例が宇都宮市でも実現できるかもしれませんし、広域連携も可能な要素がある取り組みだと感じます。
最後に浜松市の松島さんより3自治体を代表し、「地域を良くするという考えは官と民で共通の目標かと思いますし、境目なく共に取り組んでいけるようこれからも頑張りますので、引き続き宜しくお願いします!」というメッセージが送られてディスカッションを終了しました。
5.まとめ:シティラボ東京を介した連携のスタート
今回のトークセッションを通して、各自治体においてスタートアップ支援メニューは充実しており、やはりマッチングの機会をいかに増やすかが重要であることが再確認できました。またその背景には、人口が伸びていた時代に行政が当たり前にしてくれていたことを、いかに民間と連携して取り組んでいくかという課題が存在し、その間を繋ぐ中間支援的な立場として各自治体の東京事務所の皆さんや、CLTのようなイノベーション施設の存在が求められることも大きな気付きでした。
CLTでは、今回のようなパブリックパートナーの紹介・マッチングを促すイベントの実施の他、ビジネスツアーの開催も回数を重ねていますので、CLTに係る多くのスタートアップ・企業の皆さんが各自治体について知る機会を少しでも多く提供できるように努めたいと思います。
トークセッション後は、3自治体の名産品を持ち寄り頂き、参加者の皆さんも交えてカンパイしました!
宇都宮・京都の地酒、浜松のうなぎパイ、とても美味しかったです!有難うございました!
(シティラボ東京 マネージャー右田)