2019.06.22 バニラから考える、これからの都市・食・流通 -マダガスカルと日本をバニラでつなぐプロジェクト-
人、環境、社会問題・・・。「食」が都市の様々な要素との接点となる
「食」は持続可能で豊かな都市生活を実現するために欠かせないものであり、産業や都市機能、都市政策の観点から見ても非常に重要な要素です。マダガスカル共和国のバニラを日本の食卓とつなげるプロジェクトを題材に、これからの都市戦略としての新たな食と流通の在り方について考えました。
イントロダクションでは、ハートビートプランの園田聡氏が、生活文化としての食、意志ある消費、持続可能な農業といったキーワードを提示しながら問題提起し、地方都市、マーケット、マダガスカルバニラの3つの観点から話題提供を行いました。
まちづくり小浜の高野哲矢氏は、福井県小浜市での取り組みを紹介。豊かな食や食文化を誇る小浜市ですが、生産地としての競争力や流通過程での埋没といった課題を抱えている中で、「鯖復活プロジェクト」によるブランド化、伝承料理、名産品等を通じた食の体験機会創出に取り組んでいます。「食のまちづくり条例」でも、「楽しく食べ、語り合う」取り組みを推進しています。
続いて、O+Architectureの鈴木美央氏が、マーケットを通した関係性や消費の性格づくり事例を紹介しました。消費という行為も、人の顔が見えることにより、ダイレクトにまちをつくることができる大きな可能性を持ちます。たとえば、ロンドンでは都市政策としてマーケットの効果が位置づけられているようです。
最後に、メインゲストであるCo・En Corporationの武末克久氏がプレゼンテーションを行いました。バニラはマダガスカル共和国の名産品ですが、その生産・流通においては、同国の貧困を背景に、輸出業者による買い叩きなどの課題があります。武末氏が出会ったのは、アグロフォレストリーという、森林生態系保全と農家への収入確保を両立する農法。現在はこの農法で育てられたバニラを日本に届けるクラウドファンディングに挑戦すると共に、日本で持続可能な農業と消費を根付かせる方策を探っています。
ディスカッションでは、日建設計 NIKKEN ACTIVITY DESIGN labの上田孝明氏がコーディネーターとなり、登壇者と会場参加者20名が一緒に、食や流通とまちづくり・空間デザインの接点を探りました。「見えないことには関心を持てない」という観点から現地ツアーが持つ可能性、生産者と消費者がつながることによる主体性の向上、ネット上のコミュニケーションも含めたつながりづくりなど、活発な意見が繰り広げられました。参加者の皆さんは、生産や消費はもとより、人のつながり、環境・社会問題など、「食」が都市の様々な要素とのタッチポイントとなることを再確認していました。
【イベント概要】
日時:6月22日(土) 10:30〜12:30
場所:シティラボ東京
主催:一般社団法人 国土政策研究会 公共空間の「質」研究部会
協力:一般社団法人アーバニスト、Co・En Corporation
【プログラム】
1)イントロ :都市における食・流通の新たな在り方
園田聡(有限会社ハートビートプラン)
2)話題提供1:食の文化を活かしたまちづくり
高野哲矢(株式会社まちづくり小浜)
3)話題提供2:マーケットが生み出す消費者と生産者の接点
鈴木美央(O+Architecture)
4)話題提供3:マダガスカルのバニラがつなぐ未来
武末克久(Co・En Corporation)
5)ディスカッション
コーディネート:上田孝明(日建設計 NIKKEN ACTIVITY DESIGN lab)
6)会場Q & A