【Event Report】 02サステナベンチャーが挑むゼロウェイストな社会

■激動の2020年の先にある持続可能な都市の姿とは

2020年という節目に、持続可能な都市を巡る議論は新たな局面を迎えます。新型コロナウイルスの蔓延により、わたしたちの生活は大きく変化しました。今、改めて想像できる持続可能な都市とは、一体どんな姿をしているのでしょうか。 

2020年12月20日、シティラボ東京で(以下、CLT)は、持続可能な都市を模索する上で欠かせないトピックを集積し議論するサステイナブルシティ・サミットを開催いたしました。今年はオンラインで様々な分野のゲストスピーカーに登壇いただき、「まちづくり」と「ビジネス」という2つの観点からこの先目指すべき新たな「持続可能性」を模索しました。6つのセッションを行い、トータルで120名を越える方が参加しました。

オープニングセッション以降、本イベントの中盤は「ビジネスライン」と「まちづくりライン」の2つに分かれてディスカッションを進めました。

※プログラムの全体像は特設サイト参照
https://sites.google.com/view/citylabtokyo/

■サステナベンチャーが挑むゼロウェイストな社会

本セッションはビジネスラインの中で、City Lab Ventures(以下、CLV)オープンイベントとして開催されました。CLVは、CLTを拠点として活動する、サステイナビリティ特化型ベンチャーコミュニティです。課題の共有や社会的な情報発信などに対して協働で取り組むことで、サステイナブルな社会に向けたコレクティブインパクトの強化を図っています。今回は「ゼロウェイスト」をテーマとして、ベンチャーによる取り組みの紹介とトークセッションを行いました。

□キーノートトーク ゼロウェイストの意義と課題

冒頭、司会であるTBM株式会社の羽鳥徳郎氏がCLVについて説明を行った後、トークセッションでモデレーターも務めるjuwi自然電力株式会社の北俊宏氏から、ゼロウェイストの背景や現状、社会的課題、また、自社でオフィスのゴミ削減に取り組んだ経験から直面した課題などを紹介しました。事業活動そのものでは、コスト削減や企業イメージなどのメリットも明確、また、法律・認証制度も充実しているため、ゴミ削減が進んでいると言えます。一方、本業以外のオフィス活動でどこまで対策ができるか、さらに、テレワークの進展によりオフィスと家庭の境目が曖昧になっている現状をどうとらえ、それらを包む社会・都市レベルで本質的な改革に取り組むかという点では課題も多いのが現状です。

□トリガートーク ベンチャーが取り組むゼロウェイストな社会

続いて、CLVメンバーから(株式会社/一般社団法人ピリカ代表の小嶌不二夫氏、ウィファブリック株式会社代表取締役の福屋剛氏、株式会社ユーグレナの石井友里氏、一般社団法人アースカンパニーの高橋祐樹氏)事業やオフィス活動などで取り組んでいるゼロウェイストへのアプローチを紹介しました。そのアプローチは、大きくは3つに分類できます。

一つは、事業活動の中で発生する廃棄物をいかに削減していくかというもので、例えば、ユーグレナでは、個包装やエアバッグの廃止やカートカンの採用といったプラスチック削減、100%再生ペットボトルや、FSC認証など材料の見直しなどを進めています。重要課題に「サステナビリティ・ファースト」を掲げ、18歳のCFO(Chief Future Officer)の提言を採用するなど、企業理念・文化からの変革が背景にあります。

もう一つは、事業活動そのものをゴミ削減の領域で行うものです。海洋プラスチック問題に挑むピリカは、SNS「ピリカ」による市民・企業参加型のゴミ拾い活動の促進や成果の見える化、調査サービス「タカノメ」による清掃ルートやゴミ箱配置の最適化といった事業を展開しています。ウィファブリックは、世界で200億着と言われるアパレル廃棄を再流通させるウェブサービス事業「SMASELL」を推進しており、こちらもCO2削減量を可視化することで、成果の見える化を行っています。事業活動として、成果をステークホルダーで共有できることが重要な成功要因になりそうです。

さらに踏み込んだ問題、企業にとって「本業」ではないオフィス活動でのゴミ削減にどう取り組むか。アースカンパニーはオフィスエコ化プログラム「Operation Green」の開発を行い、自然電力グループを始めとした各社との協働を進めています(2019年、CLVイベントでも発表)。ユーグレナでもゴミ削減プログラムを行い、さらに、テレワークを受けて家庭でのゴミ削減にも取り組みました。一定の効果が偉える一方、削減量の見える化、ビル管理システムや自治体の分別方法による限界、社員や家族の意識や努力の負荷など、様々な課題も見えてきたのが現状です。

▽トークセッション 多様化する企業活動とゼロ・ウェイスト推進に向けて

本業としてのゴミ削減、特にプラスチックに関しては、あらゆる企業が直面する問題です。むしろ、早期に着手することがビジネス上の優位性になるという視点が大事になりそうです。既存の企業がピリカやウィファブリックの様な再流通事業と連携することで、新たな展開も考えられるでしょう。

一方、オフィス活動のゴミ削減では、まず社内のマインドセットの醸成が重要とのことです。ユーグレナのように企業理念として浸透させて具体の製品・サービスに反映する、Operation Greenのようなプログラムでオフィスユーザーの意識や行動変容を促すといったアプローチは広く参考になるのではないでしょうか。

今回の各社の取り組みとして、本業でもオフィス活動でも、小さなことからはじめ、改善を行いながらアジャイルに展開していくベンチャー型の成長モデルが、共通する特色として感じられました。一方、持続可能な都市・社会をつくっていくためには、ベンチャーだけでなく大企業や自治体といった大規模な排出源とのコレクティブインパクトが不可欠です。その意味で、ゼロウェイストはビジネスと都市の接点の一つになります。CLVでは今後も継続的な勉強会などを続けていく予定ですので、企業や自治体でゼロウェイストへの取り組みを検討されている方はぜひお問い合わせください。

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