【Report】「U30」の視点で考える「まちとの多様な関わり方」
U30とは?
我々は、「U30がワクワクするまち暮らし」をテーマに、30歳以下の世代がまちへ関わるための「新しい入口づくり」、「新たな関わり、巻き込み」を考え、実践する団体です(随時メンバー募集中)。活動のひとつとして、対談企画を実施し、それぞれのメンバーがかっこいいと思うゲストをお招きし、異なる分野の視点でまちを楽しく暮らすコツ、まちとの関わり方、都市の楽しみ方を考えています。
U30の視点で「まちとの多様な関わり方」を考える
2014年、「地方創生」という言葉が生まれ、それから8年が経った現在(2022年)では「デジタル田園都市国家構想」という言葉に変わり、デジタルやテクノロジーの活用がより一層推進されています。言葉は変わっても、より広く、長く、多様に、まちづくりに携わる、地域づくりを考えるということは変わらず大切にされているのではないでしょうか?
一口に「まち(街・町)」と言っても、100万人を超える大都市から、人口数千人の地域まで、その対象は多様であり、関わり方は無限にあります。
その中で、私たち20代は、日々の生活に追われ、仕事や暮らしの幅が限られ、もしかすると、まちとの関わり方も限定的になっているのかもしれません。
そこで、今回のディスカッションでは、『U30と考える「まちとの多様な関わり方」』というテーマの下、まさに“多様”にまちに関わられる長島町地方創生統括監 土井隆さんをゲストにお招きし、事例紹介を踏まえながら、U30メンバーのこれからの「まちとの多様な関わり方」「ワクワクするまち暮らし」を考えました。土井さんは、「自治体×ベンチャーで取り組む地方創生」「マインクラフトを活用したまちづくりワークショップの開催」「東京と鹿児島の2拠点で働きながら取り組む地域づくり」「研究所員・大学院生としてのまちとの関わり」など、街とさまざまな関わり方をしている実践者です。
地域と関わりはじめたキッカケ
U30参加メンバーの自己紹介の後、今回の企画者である篠永より土井さんをお招きした経緯をご紹介し、会がスタートしました。まずは土井さんの出身や学生時代の活動、新卒で入社した会社での取り組みから転職のお話、そして首都圏生まれ首都圏育ちから鹿児島での仕事を始めるようになった経緯をご紹介いただきました。
鹿児島と東京の2拠点に実際に在住しながら活動されている土井さんに対し、メンバーからは「なぜ生まれ育った関東ではなく、鹿児島の地域での取り組みに注力されたんですか?」という質問があがりました。(※1)
「鰤のインターネット販売を手伝って欲しい」という仕事がキッカケで訪れた鹿児島県長島町。当初より現地に住むという予定があったわけではなかったが、現地に行くと地域に対する想いや熱意に溢れる地元の皆さんが、積極的に取り組んでくれる。その光景を見た際に「この人たちと一緒に活動していきたい!」という感情が自然と芽生えたとのことでした。 離れた地からコンサルティングをするという選択肢ではなく、現地に実際に住み、実践者として取り組み続ける、その原点は地域の方々の熱意だったのだと感じました。
会社員として身につけたIT・テクノロジーの力を、人と人との縁から繋いでもらった地域に還元していく。「ITの力を活かして、地域を元気にする!」土井さんが大切にされている軸の原点が垣間見えた導入セッションでした。
地域での多様な取り組み
土井さんは他にも、複数の地域・まちでの取り組みを実践されています。
例えば、「一般社団法人 熱意ある地方創生ベンチャー連合」では事務局長として、地方創生に取り組む熱意あるベンチャー企業と、全国の自治体とのブリッジを行い、地方創生の実現に取り組まれています。(※2)
また、「Minecraftカップ全国大会運営委員会」ではディレクターとして、子どもたちの教育やまちとの関わり方・未来のまちづくりを考える機会の創出(※3)、「慶應義塾大学SFC研究員、政策・メディア研究科修士課程」では、現在行っている地域活動に対してアカデミック分野からもアプローチをされています。
ここでは紹介できなかった活動もふくめ多様かつ特色ある取り組みのご紹介から、まさに「地域との多様な関わり方」をU30メンバーで考えることのできた時間となりました。
多くの場所に足を運び、ネットワークを繋ぐ
数々の取り組み紹介の中で、U30メンバーの中から「どうしてそんなに多くの企業や自治体、人との連携・協業を実現できているのか?」と質問がありました。土井さんの取り組みには多岐にわたる分野からステークホルダーが集まり、一緒にプロジェクトを推進されています。その秘訣について、土井さんは「普段から色々な場所に足を運び、顔を出し、ネットワークをつくっている」「繋がりのある人たちに、いかに魅力を伝えて、一緒に取り組んでいけるかを大事にしている」とおっしゃっていました。
そう考えてみると私たちのU30の活動でもより多くのゲストスピーカーの方や新メンバーを巻き込んでいき、活動・ネットワークの多角化を目指すことが必要かもしれませんね!
「課題発見」「課題解決」からではなく「楽しそう!」「やってみよう!」から入る
さて、会も終わりに近づき、お題は「地域との取り組みを進めて行く上で大切にしている価値観」へ。
近年のまちづくり界隈ではしばしば、「地域の課題発見」や「地域課題の解決」といった切り口から、地域との関わりがスタートします。しかし、土井さんは「楽しそう!」や「やってみよう!」から入っていくことが大切だといいます。
楽しそう、やってみたい、おもしろそう、に対して自分からチャレンジしていく。楽しんで取り組んでいるとまた人が集まり、それを支えるお金や仕組みも整っていき、前へと進んでいく。それがやがてやりたいことをつくっていくことにも繋がり、課題を解決していくことにも繋がると。
「楽しいまちとの関わり方」を創っていくためには、まずは自分達自身がまちの中の「楽しそう!」にどんどん入っていき、実際に楽しみ尽くすことが大切なのだと学びました。
今回の気づきから、この団体のビジョンである「U30がワクワクするまち暮らし」を実践していくためには、「ネットワークの拡大や活動の多角化」と同時に「主体的にワクワクに飛び込むこと・やってみること」も必要であると感じました。新メンバーの勧誘や、他の団体の活動にも積極的に関わっていきたいですね!
今後U30がどのような企画を主体的に作っていくかお楽しみに!
(※1) 2017年6月より「鹿児島県長島町地方創生統括監」として地方創生の旗振り役を担う。
(※2)一般社団法人 熱意ある地方創生ベンチャー連合HP https://netsui.or.jp/
(※3)Minecraftカップ2021全国大会 最終審査会・表彰式 – YouTube
【ゲストスピーカープロフィール】
土井 隆(熱意ある地方創生ベンチャー連合事務局長,長島町地方創生統括監)
1985年生まれ。神奈川県座間市出身。慶應義塾大学環境情報学部卒業後、楽天株式会社を経て、株式会社ルクサにてEC事業に従事。2012年、株式会社コアース設立。WEBサービスのプロデュースを事業とし、慶應義塾大学SFC研究員として地域社会における教育の研究を行う一方、2017年より鹿児島県⻑島町の地方創生統括監として地方創生の現場での取り組みを行っている。2021年4月より一般社団法人 熱意ある地方創生ベンチャー連合で事務局長を務め、地方創生の実現に向け自治体と企業の架け橋を担う。
【企画者プロフィール】
篠永信一朗
1997年生まれ。愛媛県四国中央市出身。愛媛大学工学部環境建設工学科卒業後、慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科に進学。都市計画・地域デザインを専門とし、故郷・愛媛県四国中央市の「祭り文化」に密着した研究を行う。2021年9月より、一般社団法人 熱意ある地方創生ベンチャー連合事務局にてスタッフを務める。2022年4月より、街づくりを推進する事業会社、NTTアーバンソリューションズ、NTT都市開発株式会社に入社。
<過去記事>
第1回:「U30」の視点で合意形成を考える