【Report】「U30」企画 「地域の人と関係を築き仕事にする」
U30とは?
我々は、「U30がワクワクするまち暮らし」をテーマに、30歳以下の世代がまちへ関わるための「新しい入口づくり」、「新たな関わり、巻き込み」を考え、実践する団体です(随時メンバー募集中)。活動のひとつとして、対談企画を実施し、それぞれのメンバーがかっこいいと思うゲストをお招きし、異なる分野の視点でまちを楽しく暮らすコツ、まちとの関わり方、都市の楽しみ方を考えています。
「まち」に住まいながら「まち」に関わるゲスト ~遠藤ちえさんと高畑勝さん~
この記事をご覧になっている方は、何かしら「まち」「地域」に関わっている、もしくは関わりたいと思っておられ、「まち」「地域」というキーワードに関心のある方が多いのではないでしょうか。
仕事として直接的で公的な関わりをしている方、まちに好きなカフェがあったり、好きな人や風景があったりするから特定のまちと関わっている方、その両方が合わさっている方など色々な方がいらっしゃると思いますが、U30のメンバーも「まち」と色々な関わり方をしています。
今回のディスカッションゲストは、企画者の小川(※1)が学生時代に所属していたゼミで携わっていた東京都日野市の駅周辺まちづくり計画の一環で知り合った方々で、日野のまちに住み、まちの人と直接的に関係を築きながら仕事にしている2名をお呼びしました。
1人目は、写真家でありながら「空間とひとをつなぐこと」のイベント企画演出を手掛けながら、染め・織り道具屋も行っている遠藤ちえさん(※2)。
2人目は、古道具屋を営みながら地域の困りごとの相談に乗り、庭仕事や断捨離の手伝い、畑の運営などを行っている何でも屋の高畑勝さん(※3)。
実は人生のパートナーでもあるお二人がどのようにまちに住まいながらまちと関わり、そのようなモチベーションで仕事をされているのかお伺いしました。
地域コミュニティは「いつもの場所」
いつもの場所に人が集まっていないと“いつもの景色が違う表情を見せる”は作れない
図書館や大学、高架下、駅前広場で空間演出を行ってきた遠藤さんは、地域コミュニティやまちの図書館や大学と連携し、魅力ある空間の演出をしています。その理由として、まちの人が集まる「いつもの場所」があってこそ、そこに空間演出をしたときに、改めてその場の持っていた価値を認識することができるからだと言います。
思い返すと、日本の文化である祭りも、祭りをつくり上げる地域の人は職や立場を離れ祭りと一体になりいつもの場所をぐっと違う風景にします。それがそこに訪れる人々のまちの記憶となり残っていく気がします。私は、まちのイベントは一過性のものであり、その場しのぎの賑やかしになっているのではないかと考えたこともあるのですが、自分が知っているまちのある場所を、いつもと違う表情を見せることで、まちの人は「いつもの場所」に新たな価値を発見したり、その時の見たものや感じたことをまちの記憶とともに残していくのかもしれません。
顔見知りだからこそくる地域の話
「参加型」「協働型」「自主型」の仕事を全部やる
高畑さんは、ご自身の仕事を「参加型」「協働型」「自主型」の3つに分類されていました。U30メンバーからの3つの分類がある中で、自分がすごく楽しめているもの、仕事に繋がるもの、仕事としてずっと続けていきたいのはどれかという質問に対し、高畑さんは、「全部共通で、楽しい時もあれば楽しくない時もあるし、役に立つときもあれば、役に立たないときもある。また、どれも濃い人間関係をつくっているから仕事に繋がるため、全部並行して続けている。」と言います。
●高畑さんの「参加型」「協働型」「自主型」のポイント
・参加型
産学官の地域コミュニティで友好な人間関係を形成できた結果、信用できる人として紹介され、仕事がくることがある。
・協働型
自主的・積極的に行動しなければならないが、自分の思い通りにしようとすると上手くいかないものであり、みんなで意見を合わせるために、自分ができることを役割だと思って分散させることが大事。こちらも紹介で仕事がくることがある。
・自主型
参加型や協働型ではなく、自分が主になって動くことで、先の2つにはなかったこととして、直接的に仕事の話や相談事がくる。
まちに参画する仕方は人によって様々ですが、高畑さんのように「参加型」「協働型」「自主型」のどれも並行してやっていくこのやり方は、地域での働き方を試行錯誤してきた高畑さんだからこそ、行きついた方法であろうと思います。
高畑さんのようにまちに頼れる人がいるということは、住んでいる人にとって心強いものであると感じました。
ゲストスピーカーからU30への質問/回答
仕事以外の日常ではなかなか30歳以下の人となんて話さないから新鮮!せっかくの機会だから皆さんに質問をしたい!と言ってくださったゲストのお二人。
後半は、ゲストのお二人からU30のメンバーに向けて質問して頂きながらお互いを知り、深い話をしていきました。私としては、いつもU30のメンバーとは語らない内容を聞くことができ、メンバーの新たな一面を知ることができ嬉しかったです。
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遠藤さん:U30の視点から「“目を喜ばせる”美しいと思うものはなんですか?」
西:自分が建築学科出身なので、鈴木大拙館や豊島美術館が好きで美しいなと思います。
信一朗:友人の結婚式で結婚するパートナーを慣れない感じでエスコートしている様子を見て美しいと感じました!
かげちゃん:視覚的に美しいものは西さんと近く、空間的な美しさを感じる。情景的な美しさでいうと、道端を歩いていると、店主が出て来て今日元気?と話しかけてくれる。その情景に美しさを感じるなと思います。
はるくん:こないだ森林浴に行ってきたんですけど、とてもよかった!あと、誰かと一緒にいたら思い出や感想を共有できるからまた新たな発見ができますよね。
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高畑さん:「地域の自営業者ではないみなさんは、どのように地域の課題に向き合っていて、対談企画を通してどのように地域活動に活かしたいと考えているのですか?」
信一朗:地域課題を解決するためにU30の活動をやっているというよりは、30歳以下の自分たちが思うかっこいい大人が話し合う時間を設けることが、何かを動かす一つの方法になると思うし、単純にきっと面白いディスカッションができるだろうなと思って参加しています。
(U30の自分たちと年齢が上の世代の人たちが話すことで、)どこかしらにある“関わりしろ”を見つけるのが楽しいと個人的には思う。
かげちゃん:自分は学生時代から地域に入り込んでやっていました。今は、自己満7割、課題解決3割だと思って動いています。若い自分がまちに入ることで頼りにされる気がして承認欲求が満たされたんですよね。地域に入っておじいちゃん、おばあちゃんと関わっていくことが好きということもまちに関わっている理由の一つです。地域課題に対する問題意識は、今、東京で商店街の担い手不足問題がすごく起きてるので、商店街の担い手不足について、自分が何かできないかと思って使命感もってやっている感じです。
はるくん:質問と少しずれるけど、みんなの話を聞きながら、自分が関わりたいまちってどんなまちかなと考えていました。過疎地域であってもまちの人が自分を受け入れてくれたり、やりたいことを否定されずに応援してくれたりすると、やる気を出してまちで自分がやりたいことをやって、まちと関わっていくのではないかと思う。そのまちに良好な人間関係が形成されているかどうかも自分が入って行くか決める一つの判断材料になると思うな。
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人と人の繋がりを大事にすること
今回は、地域に入り込んでいくときの人との繋がり方・付き合い方、それを仕事にする方法をゲストとU30のメンバーでディスカッションしました。遠藤さんは、地域コミュニティやまちの図書館や大学と連携し、まちの不特定多数の人にいつもと違う風景を見せることで、その場所の持つ魅力に気づかせていましたし、高畑さんは、「参加型」「協働型」「自主型」のどれか一つに偏ることなく、平行して行い、良好な人間関係を築くことで点と点を増やしては結び、仕事に繋げていました。まちに入り込み何かを行うときは、まちに住まう人と良好な関係をもつことが、やはり強みであると感じさせられました。
対談終了後は、ゲストのお二人からU30のメンバーと何か一緒にやってみたいとの嬉しいコメントも頂きました。終了後すぐに個人的に連絡を取り合い、次に会う計画を立てた人もいるとか。
対談企画は、いつもゲスト合わせて6名程度で話をしているので関係が深くなりやすいのかもしれませんが、毎回メンバーとゲストが企画後に個別に会ったり、頻繁にやり取りをしたりしているので、私を含め、みんな人とのご縁を大事にしていると感じます。コロナ禍を理由に会えたかもしれない人と会わないのは勿体ない。リモートでも、対談企画を続けて、「どこかしらにある“関わりしろ”を見つける」ことを続けていきたいと思いました。
※空間時間 https://www.kukanjikan.com/
※古道具屋イエノコモノ https://www.ienokomono.com/
【ゲストスピーカープロフィール】
※2 遠藤ちえ
1975年生まれ。福島県いわき市出身。昭和女子大学生活環境学部卒業後、家具メーカー勤務、大学勤務を経て写真を学ぶ。カメラアシスタントを経て2011年独立、遠藤写真事務所設立。建築、インテリア中心に人の暮らしに関わることの写真撮影、動画制作を行う。
2011年より「空間時間」代表、ディレクターとして活動をはじめる。”いつもの景色が、違う表情を見せる”インスタレーション、イベント企画、運営を行っている。
※3 高畑勝
1969年生まれ。東京都墨田区出身。都立高等学校卒業後、家具メーカーやITコンテンツ、古物取扱い会社を経て、2013年に古道具イエノコモノを起業。地域コミュニティ活動や空き家をリノベーションした店舗づくりを通じて地域との繋がりが生まれ、その繋がりから仕事が生まれた経験を活かし、人の繋がりを大切した活動を展開している。
【企画者プロフィール】
※1小川華歩
1993年生まれ。熊本県熊本市出身。実践女子大学大学院生活科学研究科生活環境学専攻修士課程卒業。修士論文のテーマは建築教育。人のまちへの愛着形成に興味があり、当事者としてまちに意識を向けることでまちは豊かになると考えている。
<過去記事>
第1回:「U30」の視点で合意形成を考える
第3回:U30企画 ある人の危機感や楽しみを知ることから「まち」を考える