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【Event Report】自分と世界を変える技術 〜未来への社会的アクションに向けた行動変容ワークショップ〜

2024年5月23日、ハルモニア株式会社とシティラボ東京の共催により、行動変容をデザインするためのメソッドを学ぶ場を催しました。まちづくりやビジネスの中でサステナビリティに関わる人、行動変容のアプローチを学びたい人など26名が参加し、熱のこもったディスカッションとワークが繰り広げられました。

■なぜ「行動変容」?

記録的猛暑、長すぎた残暑、世界的高温…など、深刻な気候変動を実感させる言葉が巷に流れています。ビジネスの世界でも気候変動や生物多様性への対策が喫緊の課題となっています。まちづくりでも半数を超える自治体がゼロカーボンシティを宣言しました。サスティナブルシティに向けた社会の「意識」は着実に変化していると言えるでしょう。

一方、それを実現していくための「行動」はどうでしょうか?特に、サスティナブルシティに向けた行動変容は、個人、企業、国・行政といった立場を越えたレベルで必要とされていますが、それ故に、内外のさまざまな葛藤があり「鶏と卵」問題の中で躊躇している人も多いのではないでしょうか?

例えば、再生可能エネルギーの普及と言った事例を見てみましょう。一見、日本でも普及は順調に進んでいるように見えますが、2030年に日本が目標とする水準には全く届いていません。ましてや2050年にカーボンニュートラルを実現できるための行動とはなっていないのが実情です。

「鶏と卵」問題の構造(https://note.com/mattsun/n/n6e3fc53ed57b)

未来を先送りした結果はハードランディングになることが必至な中、望ましい未来にソフトランディングするための「行動」を考える必要があります。

■自分と世界を変える技術

本ワークショップは、ハルモニア株式会社のCEO松村大貴さんをファシリテーターにお迎えし、個人と社会を結ぶ「行動変容」のデザインメソッドを体感しながら学ぶことを目的としています。

ハルモニアは2015年に創業、「ビジネスのすべてをダイナミックにし、地球のサステナビリティを向上させる。」をミッションに、ダイナミックエコノミーを実現するためのプライシング変革支援をコアとして、モビリティや小売業界などで実現しています。

さらに、松村さんは、望ましい社会に向けた行動変容という観点ではプライシングも一要素であり、その他の手段も含めて考えることが大切、また、なによりもその構造を観察し、理解することが重要という観点から、プライシングに限らず行動変容全般についてメソッドの開発と普及に取り組んでいます。

実は、松村さんは2月17日に開催された「サスティナブルシティ・サミット4」の基調講演で登壇いただいたのですが、当日は時間の関係もあり、メソッドの詳細までは触れられなかったこともあり、本日のワークショップに至った経緯もあります。

■行動変容ワークショップの進め方

本ワークショップでは、事前に課題意識を持つ参加者の意見も把握した上で、サスティナブルシティという観点から下記4つのテーマを設定、グループでワークを進めました。

A ごみの分別・リサイクル促進
B サステナブルな消費
C 町のコミュニティ・助け合い
D GX、カーボンニュートラルの加速

立ち上がる人が増えてワークショップも熱気に溢れて…

その上で、行動変容設計のフレームワークに沿って、テーマごとに以下のステップで検討を深めていきます。

1.Define|定義

まずは「誰の、どんな行動を、どんな行動に変えたいか」できるだけ具体的に決めます。例えばテーマ「A ごみの分別・リサイクル促進」であれば「個人個人が、ごみ分別や資源回収に積極的に取り組む」といった形です。

2.Observe|観察

現状の行動が変わらないのは「動機<コスト」となっているためという想定(シーソーモデル)のもと、その背後にある構造を観察し、理解します。まず、行動の「動機」と「コスト」を掘り下げて可視化していきます。更に、行動変容が進まない場合に起きる嫌な結果も挙げながら、ダメがダメを呼ぶ悪循環を探していきます。

例えば、ごみの分別が進まないのは「分別の仕方がわかない」や「皆んながやっているから」という「コスト」が背後にあるかもしれません。でも、そのままにしておくと「自治体のごみ対策費用が上がる(税収が悪化)」して、回収サービスも向上しないといった悪循環が起きそうです。

3.Reveerse|逆転

いよいよここから、悪循環を断ち切るためのワンアクションに向けて変化させる要素と施策を考えていきます。動機を加えてコストを減らし「動機>コスト」という状態をつくるのです。

その際に、本ワークショップではヒントとなる行動変容テクニック集や、すでに新しい行動を始めているポジティブな逸脱者(ポジティブディビアンス)に着目する考え方などを紹介しています。

4.Structure|構造化

せっかく行動の変化が起きても持続しなくては意味がありません。そのような「構造」が成り立つための方法を考えます。経済的に続けていける構造に変えるためには、補助金や税といった政策的なアプローチもありますが、異なるビジネスモデルやステークホルダーを組み合わせるなど、ビジネスやまちづくりでも考えられる方法もあります。

5.Transition|移行

ステップの最後では、新しい社会へ移行していくための戦略やプロセスを描いていくために、時間軸に沿ってアクションを整理していきます。大事なことはまず最初のマイルストーンを見つけること!

各グループの検討成果、短時間でしたがふせんがびっしり!

5つのステップは以上で終了ですが、最後にもう一つ大事なアクションがあります。それは、導き出した社会的な変化のストーリーの中に「自分」のポストイットを貼ることです。「変化の中に自分自身を位置づける」ことが、明日からの具体の行動につながります。

■個人が駆動する、社会の変容 〜 Tomorrow is In your hands

最後に、ファシリテーター松村さんより、「あらゆる変化のムーヴメントには、その源となる個人がいる」こと、自問自答を続けながら不確実でインパクトフルな挑戦を先頭で楽しむことが最も重要なことというメッセージが伝えられ(ただし完璧よりベターを進める方が変化は早いというコツと共に)、本ワークショップは閉会となりました。

今回は2時間という短時間でしたが、メソッドの進め方や「循環」をベースに考えていくシステム論的な考え方を実際に体験する場となりました。

実際に行動変容をデザインするためには、やはり実践者の皆さんがビジネスやまちづくりの中で直面する課題に対して、本腰を入れた検討が必要です。また、従来の直線的な思考に慣れている人がシステム論的な考え方にスイッチを切り替えるためにはファシリテーションも重要で、研修やワークショップを進行しながら、参加者の考え方を広げていく行動変容デザイナーを増やしていく必要性も感じます。

今回の参加者のみなさんが、自らの現場で行動変容を推進すると共に、行動変容デザイナーとして周りを巻き込んでいきながら、サスティナブルシティに向けて展開していく期待を感じさせるワークショップとなりました。

明日の行動変容デザイナーたち!

■参加者の感想コメント(抜粋)

  • 自分の仕事が今回のテーマに対して寄与していることが感じられてモチベーションが上がった
  • 自分の次の行動が見えてきた、リブートのきっかけになった
  • 個々人で構造化した図を重ね合わせてみると、また新たな気付きがありそう
  • ゴールに向けてスモールステップでできることが見つかった
  • 構造の把握により、漠然と大きな問題に周りを巻き込んでいける気がしてワクワクした
  • さまざまな場所で働いている方々の意見を聞けて視野が広がった
  • 初対面の方とのチームワークが生まれ、一緒にアクションしていく関係性ができた

(追記)

行動変容の考え方やテクニックをもっと学びたい方は、松村さんのnoteもご覧ください。ワークシートもダウンロードできます!また、企業や地域が抱える固有の課題に対して本格的に行動変容ワークショップを行いたいという方は、お繋ぎしますので、シティラボ東京のContactフォームよりご連絡ください。 https://note.com/mattsun/n/n6e3fc53ed57b