レポート
【Event Report】“スロー”を実感できる場所~「介護3.0」から考える自分らしい生活〜
◆介護を変えるイノベーションの 3 つの柱
◆介護 x 建築~介護付有料老人ホーム「新」~
◆介護とまちの関係性
◆”スロー”につながるキーワード
介護 1.0 は、いわゆる無償の介護で、親や配偶者のためにオムツ交換や食事介助な どの「お世話する-お世話される」関係の介護です。現在でも多くの施設や介護士に とってのスタンダードがこの「お世話する-お世話される」の介護 1.0 となっていま す。
介護 2.0 は、介護業界における人材不足などの超高齢化社会を「問題」と捉えたと きの対策であり、介護の DX などを活用した「お世話する-お世話される」がまんべ んなく行き届き同じサービスを受けることができるようになった介護です。介護 2.0 では同じサービスを受けることができる一方で、それだけで良いのかという個 別ケアに対する課題があります。
介護 3.0 は「お世話する-お世話される」からの脱却であり、「お年寄りが輝き、自 分も輝く」ための介護です。お年寄りが行きたい場所に行く、会いたい人に会う、 やり残していることを叶える個別ケアによって、その人らしい生活を取り戻す。職 員にとっても4K と言われる職場から輝ける仕事になることを目指しています。
介護 3.0 は、問題ではなく目標を設定すると同時に、他の介護施設で実際にどうや っていくかを広めることで、介護の仕事のスタンダードを目指しています。
①マインドセット:前述の通り、諦めから希望へ、代行から応援へ、といった捉え 方や本質の見つけ方がまず重要です。
②ソフト(技術):その上で、お年寄りの居場所を作るためのビジョンを構築し、シ ステムや介護技術、人づくりなどに反映していきます。
③ハード(環境):ソフトをを支える環境として、場所や空間、建築やデザイン、人的環境などを整備していきます。
(西田)1960 年代にジャーナリストのジェイン・ジェイコブズは「機能的な都市 空間は楽しいのか」という問題提起を行っており、近年のまちづくりでも都市空間 の余白(無駄)を見直すといった捉え直しが起きている。介護 3.0 の捉え直しにも 共通するのではないか。
(横木)ナースコールを 1 日に 100 回も押すようなお年寄りもいるが、この人の満 足度を上げるためにはナースコールが鳴ってからその人の元に行くのではなく、ナ ースコールがなっていない時に行くことが大事。用事もないのに来る、理由もない のに居るといった「無駄」が大事で、そこに信用や関係性が生まれる。 また、介護を知ることによってビジネスモデルやマーケットの幅が広がる。地域の 生業では、お客さんが認知症や車椅子になってしまうと困った状態になってしまう が、まちに根付いているサービスと連動することで、元気なうちから介護をされる 人を支えられる、ビジネス継続にもなり、介護業界の人手不足解決にもつながるの ではないか。
①本質を捉え直すことで、問題と思われていたことがビジネスチャンスになったり、課題解決 につながったりするのではないか
②本質を捉えた上で、実現するための技術と環境を考える時に、新しい掛け算や引き算が生ま れる。
③新しい掛け算や引き算を行いながら、新しい接点や関係性をつくることで、これまでとは異 なる解決方法や化学反応が生まれ、結果として、介護のような個の目的がまちに開いていく。