【Event Report】重松健×石山アンジュ×重松大輔「東京のワクワクする未来を考える」

左:大輔氏、中央:健氏、右:石山氏

2021年1月27日(水)、ニューヨーク在住でラグアルダ・ ロウ・アーキテクツ共同代表の重松健氏(以下,健氏)をコーディネーターに、社会活動家の石山アンジュ氏(以下,石山氏)とスペースマーケット代表取締役社長の重松大輔(以下,大輔氏)をゲストとしてお迎えし、「東京のワクワクする未来を考える」対談が行われました。当イベントには全国から約60名がオンライン参加しました。

本イベントは、コロナ禍で世界が問題に直面し、ネガティブになっている今こそ、それをポジティブに変換して「ワクワクする未来」を考えようという連続イベントの第6回目です。今回は石山氏と大輔氏「シェア」の視点と参加者の質問を踏まえてクロストークを行いました。
第1回レポート<重松健氏×齋藤精一氏>、第3回レポート<重松健氏×乙武洋匡氏>)

 

■東京のワクワクする未来の提案

初めに健氏から、東京の未来ビジョンとして、首都高速都心環状線を歩行者専用に開放するとともに、ただの公園ではなくパーソナルモビリティの実験場など、複合的な機能を持った「TOKYO G LINE」とする提案、都心の河川や運河を活かして水上交通網をつくるとともに、日常の風景を変える「TOKYO B LINE」の提案を説明します。
単に空間やモノをシェアするだけでなく、「シェア」して活用しながらソフトの使い方を向上させ、10年後にハードとして整備するというアイデアを示し、シェアの専門家であるお二人によるキートークを開始します。

■シェアリングエコノミーと都市

政府委員も多数務め、組合型の「拡張家族」コミュニティや他拠点居住を実践する石山氏からシェアリングエコノミーと都市の関係について話します。
これまでの都市は、パブリックスペースや商業施設などBtoC(Business to Consumer)が議論の柱となっていました。一方、シェアリングエコノミーでは犬の預かりサービス、ライドシェア、子供の預かりなどCtoC(Consumer to Consumer)を活かします。インターネットによって、昔の近隣住民との「醤油の貸し借り」が世界中の人と瞬時にできるようになりました。個人が持つスキルや場所を提供することが生活の充実度や幸福にも寄与します。
その上で、シェアリングエコノミーが生活の一部として当たり前に機能することに向けて話が展開します。

■空間のシェアリングの実践例 

スペースマーケットの大輔氏は、空間のシェアリングによる実践から信頼について話します。スペースマーケットは、あらゆる場所を15分単位で貸し借りすることができ、現在14,000件ほどが掲載されており、住宅、飲食店のアイドルタイム、公共スペースなど多様な空間が貸し借りされています。貸し借りされる空間では会議、撮影、イベント、趣味、トレーニングなど幅広い利用がされています。
この空間のシェアリングでは、空間を貸し出す人と利用者が相互レビューすることによって信頼を可視化しています。このレビューが次に使用するときの信頼につながっています。

クロストーク(要旨)

シェアリングエコノミーを都市に実装していくために登壇者のクロストークに移ります。

▼シェアリングエコノミーの定着に必要なユーザーリテラシー

シェアリングエコノミーを大きく分類すると、資本主義の中で資金調達などを行い進めるアメリカ型、国と企業が一体となって進める中国型、個人の意思が反映されながら進めるヨーロッパ型があります。そしてヨーロッパ型のシェアリングエコノミーにおいては「信頼」がキーワードになりますが信頼には以下の段階があります。
第1段階の信頼:顔見知りのような信頼
第2段階の信頼:国や組織など制度に預ける信頼
第3段階の信頼:テクノロジーなどによって分散され数値化された信頼
日本のシェアリングエコノミーはヨーロッパ型に近いのですが、CtoCの観点からは、企業の製品やサービスが優れていて消費者も品質にこだわりすぎるといった障壁があります。日本でシェアを進めていくためには第4段階の信頼としての「ユーザーリテラシーの向上による信頼」も考えていかなければなりません。

▼「シェア」による多様な価値観の創出と選択肢の増加

シェアリングエコノミーの魅力の一つは「アイデア」もシェアできることです。企業では需要が小さく手が出せなかったマニアックな分野などにも、需要と情報が広がることで出会える可能性が広がります。例えば、空きスペースとフリーのトレーナーがいれば、その空間とスキルをシェアすることで新しい活動が生まれます。さらにそれが付加価値となって、経済にも貢献できるようになります。観光ガイドブックには出てこないまち特有の魅力を作ることも可能なのです。「シェア」によって生活の選択肢が増えることも豊かさにつながるのではないでしょうか。

▼「シェア」と都市がつながってワクワクが生まれる

シェアリングエコノミーはデジタル技術の活用により分散していたモノやアイデアを結びつけることで新しい価値を生み出しますが、リアル空間である都市のつくり方にはどのような影響をもたらすでしょうか?
例えば、公共空間のシェアであるパブリックスペース、空間はシェアしていても活動は個人で完結している、なんとなく社会階層で分断さているという事もあるように思えます。新しい出会いや交流を生み出すためになにが考えられるでしょう。効率的な移動を中心とした交通空間、歩ける動的な場や留まれる静的な場をどうデザインしていけばよいでしょう。まちなかの駐車場や空き地にも可能性がありそうです。アイデアや活動も含めて空間をうまく「シェア」することで、人々の信頼に根ざしたより豊かな都市になるでしょう。

 

【開催概要】
■日時:2021年1月27日(水) 20:30〜22:00
■コーディネーター:重松健(Laguarda.Low Architects 共同代表 /inspiring dotsファウンダー)
■ゲスト:石山アンジュ(社会活動家)、重松大輔(株式会社スペースマーケット 代表取締役社長)
■モデレーター:矢野拓洋(シティラボ東京)
■主催:シティラボ東京(一般社団法人アーバニスト)

[タイムライン]
20:30 – 20:40 イントロダクション
20:40 – 21:40 ディスカッション/クロストーク 
21:40 – 21:55 Q&A
21:55 – 22:00 クロージング

次回の第7回は、重松健さんがThe Human Miracle株式会社 代表取締役・クリエイティブディレクターの小橋賢児さんをゲストに招き鼎談します。キーワードは「新しいライフスタイル」です。

・第7回のお申し込み:https://citylabtokyo-wakuwaku7.peatix.com/

第1回レポート(重松健氏×齋藤精一氏)
第2回レポート(饗庭伸氏×藤村龍至氏)
第3回レポート(重松健氏×乙武洋匡氏)
第4回レポート(饗庭伸氏×篠原雅武氏)
第5回レポート(饗庭伸氏×山崎亮氏)

関連記事一覧