レポート
【Event Report】“スロー”を実感できる場所~社会課題解決型スタートアップから考えるサスティナブルシティとまちづくり 〜ごみ拾いSNS「ピリカ」の実践〜」
◆活動を広げるために期待値を上げる
◆データを可視化してイノベーションに繋げる
◆”スロー”につながるキーワード
ごみ拾いは、「拾う事で証拠がなくなってしまう」アクションなので、色々な地域でごみを拾う人はいるものの、誰にも気づかれることがなく、活動が広がっていかないという問題があります。「SNSピリカ」はボランティアでごみを拾う人に向けたサービスで、ごみを拾って写真を撮り、発信することで、感謝されたり仲間が増えたりします。ごみ拾いという行為を可視化して、フィードバックすることで、ごみ拾いをする本人が感謝されることで活動が継続したり、真似をする人が出てきてごみ拾いに取り組む人が増えていく構造になっています。
この「SNSピリカ」は自治体では市民の清掃活動を扱う環境政策部門に導入されています。ごみ拾いの実施量や参加人数が明らかになるなど、データが可視化されることで予算に対する効果が検証できます。また、企業では社会貢献部門など会社の清掃活動などに導入されています。実際に使用することで、年間数千人もの人が清掃を行なっていたという事実が分かり、会社のPRやブランディングにもつながるといった事が起きています。
活動を可視化することで、このように個人、自治体、企業の各々に対して、その活動を促していく、拡げていく効果があります。
「SNSピリカ」を活用しても、実際にまちが綺麗になっているのかまでは分からない、また、ごみが拾われている一方で捨てられているという問題もあります。そこで、開発したのが、「タカノメ」です。「タカノメ」は、車などにスマホを取り付け、道路上のごみを読み取ることで、ごみの分布図を生成することができます。この分布図を活用することで、ごみ拾いが効果的な場所を可視化することができます。また、ごみ箱や喫煙所を設置する前後で調査を行うことで、施策の効果を可視化することができます。
(小嶌)最初はサービスや活動を知ってもらうことが大事で、そのきっかけが掴めないと、飛躍ができません。「SNSピリカ」はリリースの時に、世界10カ国で使われている状況を作りました。世界で使われているサービスという期待値が上がることで、試してみようという気持ちになったり、周りを誘おうとする動きになります。全体的な期待値が上がっていかなければ、そもそも始められないこともあり、期待値を上げていくことが重要です。
もちろん、期待値を上げていくために、さまざまな準備を行うと同時に、期待値に応える実績をきちんと上げて信用してもらうことが大事です。「SNSピリカ」は現在121カ国で使われており、回収されたごみは3億個になりました。
(小嶌)自治体などのごみ拾いに関連するお金の使われ方は、ごみ拾いイベント、ごみ箱の設置、歩きたばこに関するパトロール、市民向けの啓発イベントなどがあります。これらの成果が見えないことが多かったのですが、データを可視化することで、新しい取り組みを始めるきっかけになります。
モチベーションに関しては業務や日常のルーチンワークに組み込むことが一つの方法です。また、ごみ拾いに関していうと一部の人が頑張る傾向にあるので、その人たちをちゃんと盛り立ててローカルヒーローにしていくことが重要だと思っています。
「タカノメ」を活用して、都市ごとにごみの分布を可視化、比較することが出来るようになりました。良い意味で競争意識を生み出すこともイノベーションに繋がるのではないでしょうか。
(小嶌)普段のビジネスと違う角度からの質問も多く、用意した答えではなく、色々と考えて喋ることが多い時間でした。また、「ピリカ」や「タカノメ」が色々なまちづくりに使える可能性があることを感じられました。ぜひ、参加者の方を含めいろんなコラボレーションができたらなと思います。
(西田)「拾うとなくなる行為」をログとして残すことで、時間が経ってからも深掘りしたり共有したりすることによって、まちの記憶や愛着にもつながるのではないか。ごみ拾いという分野はブルーオーシャンであり、エンタメ、教育、育児などとも組んで新しいビジネスになる可能性も感じました。
①価値転換を⽣み出すためには期待値をできるだけ高めていく
②これまで見ることができなかったデータを可視化することで、はじめの一歩を踏み出すきっかけになる。また、劇的な変化が見えにくいものもでも長い時間の中で小さな活動の履歴を残していくことで、変化を確認することができる。
③地道な活動の中に楽しさを見出すことで、成果だけではないプロセスを楽しむことができる。